出版社内容情報
日本近世社会における正統的な儒教的世界観の内面的崩壊過程を問題史的に解明し,〈自然〉〈作為〉の対抗の中に日本思想の近代化の型を探求.戦後の日本思想史研究の道を切り開いた古典的名著.新装版 毎日出版文化賞受賞
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
傘緑
24
呉智英(封建主義者にして白川静の圧倒的な讃美者)の『危険な思想家』の中に、本書は気持ち悪いくらいの讃美を受けている。思想に関して全くのズブの素人である私の感想もまた、『危険な思想家』の延長線上にあることを断っておきたい。本論文にかかる丸山眞男の問題意識は、なぜ幾多の革命や国家転覆を経験した支那の歴史は、フランス革命のような思想面でのダイナミックな変革を産まなかったのか?近似な文化圏(儒教)にある日本は、なぜ近代化を成し得たのか?丸山はその背後にある儒教(朱子学)という思想に迫っている。(以下コメント欄へ)2016/11/05
てれまこし
6
丸山は戦中派の自分の父より11歳年長。大正デモクラシー真っ只中に生まれ育ってる。だから戦争熱からも距離を置けた。戦後は戦中派が黙ったから、戦後世代はむしろ丸山世代の知的遺産を継承した。この世代の問題意識はなぜ近代化の道をたどっているようにみえた日本が突如として野蛮に逆戻りしたかというもの。近代化の行き過ぎを憂慮しアジア的精神への復帰を唱える「近代の超克」論に対して、近代化不足にその原因を見ようとする。近代化は西洋起源ではない。江戸にも近代思想の契機があった。しかしそれは成熟しなかったし、今でもしてない。2023/12/08
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
3
再読。どういう意味においてこの本は古典なのか。まず上げられるのは、本書が「日本政治思想史」という学問を創出したこと。その意味は、この本が日本における公私問題の最初であるということでもある。西欧政治思想史をトレースしながら後期スコラ哲学がトマス主義に果たした役割を徂徠・宣長学に見出し、その政治的主体の創出(儒教の政治化)が逆説的に政治主体の歴史的相対化を促すというその論理は、一面で近代的思惟の指摘でありつつ日本における公と私が公の一方的突出に終わること(明治思想史の主旋律)も示し、今日の公共性論につながる。2017/05/04
スズツキ
3
超難解。今年読んだ本で最も苦戦しました。旧かな遣い、膨大な量の古文漢文からの原文引用、馴染みの薄い在野の江戸思想家と伝統思想との対比……他の丸山作品は楽しみながら読めるけど、これは手強すぎますわい。2015/07/23
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
3
今、ベラーと比較しながら読み返してる。丸山はベラーに対して怒るわけだけど、『研究』のなかで、公私の分化という点で近代意識の萌芽を讃えつつ、江戸期を通じて資本主義の未発達というか前近代性を痛烈に批判するという、このジレンマは何かと考えれば、徂徠の作為の論理が生んだ<魔物>の可能性として丸山は①革命②内部崩壊の二点を挙げつつ、資本主義の未発達故に、①は有得ず(外圧という別の要因で明治革命)②が進行しつつも限界があるってことでしょ?すると、結局、丸山の目指した<自由>はベラ-の<経済>と被るんだよなあ、と。2014/05/12