出版社内容情報
古代文書の機能,様態の再検討のための条件が整いつつある.翻刻・復原が進む正倉院文書を軸に,木簡・漆紙文書などの出土文字資料の研究成果を手掛かりにして,古代文書研究の方法・方向,そして古代国家研究の新たな分析視角を追究する論文集.
内容説明
日本古代史研究では、近年における正倉院文書研究の進展、漆紙文書や木簡あるいは墨書土器などの大量の出土文字資料の発掘と分析、公式様文書と国家機構・政治過程の関連についての研究視角の提起などにより、古代国家確立期である八世紀の古文書の機能と様態の再検討の必要が強く主張されている。また、正倉院文書研究や出土文字資料研究は、古文書を、そこに書かれた文字のみで理解するのではなく、メッセージを塔載した物体として認識する必要があることを提起している。さらに、正倉院文書は、八世紀中葉の政治と宗教の中心の一つであった皇后宮職と東大寺の歴史の中から産み出されたものであり、写経事業の文書・帳簿から政治過程をうかがうという新しい政治史の方法のための史料としても注目されている。本書は、このような古代文書論に関する、研究動向整理、最新の研究成果、古文書学・史料学への問題提起を行なう諸研究を集めた論集である。
目次
第1部 正倉院文書により古代文書の再検討(正倉院文書の原本調査;正倉院文書目録編纂の成果と古代文書論再検討の視角;正倉院文書の継文について;写経事業と帳簿;正倉院文書と続日本紀)
第2部 古代文書論の新しい視角(出土文字資料と正倉院文書;文書木簡と文書行政―地方出土木簡を例として;古代の文字資料と書写の場;平安時代の文書とその機能―生成・伝達・整理保管の過程を通して)