出版社内容情報
過去を思い出す行為である想起を通じて、想起者の体験へと接近し得る可能性を追求する。記憶痕跡論や記憶構成論等の主張を批判的に辿り、ギブソンの生態学的知覚論を経由することで「生きている想起」を説明可能な新たな記憶・想起論=生態学的想起論を構想する。
内容説明
「入れ子になった二重の身体と環境(自己)を同時に知覚することが想起である」これまで紡がれた記憶論を批判的に辿り、「生きている想起」を説明可能な新たな生態学的想起論を構想する。
目次
第1章 エビングハウスと記憶の実験室研究(記憶の実験心理学の誕生;方法論的行動主義へ ほか)
第2章 バートレットを再構成する(バートレット、エビングハウスに抵抗する;スキーマ論―未完のアイデア ほか)
第3章 ナイサーの日常記憶研究(認知心理学の先駆者;生態心理学と認知心理学の間で ほか)
第4章 環境と接触した体験の想起(回復する身体;偽りの記憶 ほか)
第5章 想起の新しい理論(想起の理論化の試み;環境と身体 ほか)
著者等紹介
森直久[モリナオヒサ]
札幌学院大学人理学部教授。博士(人間・環境学)。専門は生態心理学、社会心理学、教育工学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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shin_ash
3
生態心理学なる分野がある様で生態学的に想起を説明してみたのが本書の内容である。このシリーズでは3冊目であるが、ようやくギブソン的(生態学的)なものの見方の雰囲気がイメージできてきた気もする。そう言う意味では楽しく読めた本書ではあるが、ここで展開される想起の理解を身につけるのは難しい。それくらい常識の再整理が必要である。しかし、日常に照らせば納得な論考でもある。本書は想起と想像を明確に区別する。テーマは想起であるが、こうなると想像って何?と思ってくるし、物語って何?と気になってくる。想起が実体験に基づくかが2023/05/06
mad_mae
1
「想起(知の生態学の冒険)」を読み終えた。記憶については脳に貯蔵している印象があるが、正確な記憶は存在しないので、想起について考えることで人間が持つ記憶的なものはどのようなものかを考察していて面白かった。なんとなく分かると思ったのは、「”今ここ“にいる社会や環境、また自身の状態」によって想起は変容していくという点。過去の記憶は現在の視点でしか語れないため、かなり修正や訂正がかけられていく、と。2023/06/10