内容説明
「わかる」ことの原点を問い直す。エキサイティングな議論で理解研究の流れをつかむ。解題・人はどのようにして「他人の心」を理解するのかを新規収録。
目次
1章 理解の文脈依存性
2章 算数・数学における理解
3章 理解におけるインターラクションとは何か
4章 リテラシーの文化的起源
5章 「理解」はどう研究されてきたか
解題 人はどのようにして「他人の心」を理解するのか
著者等紹介
佐伯胖[サエキユタカ]
1939年生まれ。1964年慶應義塾大学工学部卒業。1970年ワシントン大学大学院学芸学科心理学専攻博士課程修了。Ph.D.(心理学)。青山学院大学文学部教授。専攻は認知科学・幼児教育(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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鵐窟庵
4
印象に残った箇所。3章では数学の理解が動くイメージと変容するシェマの把握が重要だと述べられる。4章ではアルファベットの発明が、事物を抽象化して要素還元し、反復して組み合わせる思考が生まれたと述べられている。5章では認知科学における理解の研究の歴史が述べられる。有名なR.サイモンの「情報処理アプローチ」による理解のトップダウンの考え方に対して、ナイサーの「認知心理学」以降の、単に機械的な入力出力によらない、心理的な認知のまとまりによって認知されるというボトムアップの考え方が主流になる。2020/03/15
がりがり君
3
科学哲学者村上陽一郎がパラダイムという概念について寄稿している。科学の発展は科学革命→パラダイムの中でのパズル解きという形で進められるのであり、パラダイムはある共同体が共有している、不連続なもの、とされている。学者は教育によってパラダイムを取得するのであり、この場合パラダイムは「常識」と置き換えてもいいかもしれない。みなが暗黙的に知ってはいるがめったなことで表面化しないもの。たとえば相対性理論では質量はエネルギーと可換なものとして語られる。質量の例えはあまり好きじゃないんだが、んー。2019/04/07
Ryosuke Tanaka
1
流し読み。理解・発見の「快感」をいかに位置づけるか?という目的からはやや外れたか。狭義の「認知心理学」とのディシプリン上の越えがたい溝を再び実感するとともに、結局「理解が理解されるとはどういう状況か?」ということ自体が霧の中という感想が拭えない(あるいみ自己言及的な問いなので当たり前だが)。 2016/08/22
maki
0
タイルを使った因数分解は目からウロコ。「11」を「101」,「88-8=8」と書く小学生の話は思わず笑,理解とは何かを大いに考えさせられた。「よりわかっていない人の批判が役に立つ」に大いに納得し、課題遂行係とモニタのモニタってソクラテス?っと思ってしまった。2014/01/15
そうとめ
0
人は、どのようにして「他人の心」を理解するのか?の最後に、 ・人間は生まれながらにして他者と「ともに」生きていくよう仕向けられており、そのように発達していくのだと考えてみよう。 ・人間発達の「軸」にあるのは、「共感」であり、人は、より深く、より広く「共感」できるように発達していくのだ、といえるのではないだろうか? と書かれています。 「根源的能動性」とは「共感」しながら知識を獲得していくということなのかな?つめこみ・まねるだけでは得られないもので、子どもの教育には必要と考えているということなんだろうか?2012/05/15