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内容説明
責任という現象の構造・意味は何か。責任の根拠を問う。
目次
序章 主体という物語
第1章 ホロコースト再考
第2章 死刑と責任転嫁
第3章 冤罪の必然性
第4章 責任という虚構
第5章 責任の正体
第6章 社会秩序と“外部”
著者等紹介
小坂井敏晶[コザカイトシアキ]
1956年愛知県生まれ。1994年フランス国立社会科学高等研究院修了。現在、パリ第八大学心理学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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- 評価
新学術間接経費本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きいち
27
哲学が今この現実に対して持つ力を実感させてくれる本。◇原発事故でも慰安婦報道でも、いやもっとつまらない日頃の商売の失敗でも、責任の追及がかえって原因解明(そして対策の実行)を邪魔することには気づいていた。「奴の顔をたてて縮小の経緯が判明したら手がうてる」と実を取るか、「あの課長に責任を取らせないでいいのか」という理か。おおむね私は実をとってきたが、何ともいえない不快感からは逃れられない。◇この「理」がおかしかったのだ。責任は理屈ではなく社会秩序の安定をもたらす感情の問題。まずはここをしっかり弁えることだ。2015/03/31
たばかる
16
初読小坂井敏晶。先週読んだ真木(見田)に似て多彩な学問分野から言及してジャブをかますスタイルなのだと。社会の見方は社会システム論―社会秩序はたまたまそうなっているーに準拠。だからこそ責任概念は虚構でありかつ、社会秩序のために必要なもの。近代では個人化により自己責任を追及するが、自分のの行為が随意的かどうかという客観的な論証は不可能。だが秩序のためには規範を設けなくてはならない。ここまでがまとめだが、小坂井が虚構にニヒリズムにならず虚構ゆえの価値を見出そうとしている点ではニーチェらしく前向きであった印象で⇒2022/04/07
ゆう。
16
僕にとってとても難しかった。僕の問題意識は現代社会のなかで「責任」とは何かというもの。それに対して、本著は答えをあたえてくれなかった。まさしく「虚構」というのがその答え。著者はあとがきで「大切なのは根拠の欠如を暴くことではなく、無根拠の世界に意味が出現する不思議を解明することだ」と述べている。人間が作りだした道徳や法が客観的存在として見えるのはなぜかと問うている。基本的に不可知論という世界観が本著に流れていたように思われた。2016/06/10
月をみるもの
15
アプローチの方向はまったく違うけど、言ってることはこの本とほぼ同じ https://bookmeter.com/reviews/57705212。 罪と罰を成り立たせる"責任"という概念こそが、進化の過程で培われた、人間の因果把握能力の基礎なんだとすると、どこかに「悪者」を見つけてそいつを詰ることに夢中になる輩が多いのは必然ということになる。。2019/01/27
toribirds
7
ここ5年で読んだ本の中で最も知的に揺さぶられた本。無駄な文章、引用が全くなく、内容は一生掛けて考えても良い問題ばかり。新聞配達員の起こした事件について新聞社の社長が責任をとる必要があるのか。人を刺した場合、近くに医者がいて助かった場合とそうでない場合でなぜ問われる責任の重さが違うのか。筆者はその根本には、因果関係ではなく、被害者の処罰感情があり、それに対応して責任というシステム(虚構)が作られたのではと言っている(と解釈しました。)。責任というシステムの重要性を否定しない所も著者の考えが深い表れと感じた。2010/11/20