出版社内容情報
怪談となった江戸の「事件」を独自の解釈で語り直す人気シリーズ、待望の三作目は「皿屋敷」。暗く冷たい井戸の縁で、菊は何を見たのか。
内容説明
欠けている男、満ちあふれた男。足りている女、求め続ける女。数える男、数えられない男。それぞれの生を映す瞑く冷たい井戸の縁で、ただ静かに狂う歯車―それは、はかなくも美しい、もうひとつの「皿屋敷」。江戸時代、人口に膾炙し怪談となった「事件」を、当代きっての戯作者・京極夏彦が独自の解釈で語り直す人気シリーズ、待望の第三作。
著者等紹介
京極夏彦[キョウゴクナツヒコ]
1963年生まれ。94年『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で第四九回日本推理作家協会賞(長編部門)、97年『嗤う伊右衛門』で第二五回泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で第一六回山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で第一三〇回直木三十五賞、11年『西巷説百物語』で第二四回柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うーちゃん
23
手に持って読むだけでエクササイズができそうな770項の本には、「数える/数えない」ことにとらわれた人々について、延々と描かれている。あまりに執拗かつ極端なので、苛々したり、投げ遣りに読みたくなってしまうかもしれない。だけど、それでもやっぱり、泣いてしまう。数えても数えても足りない。足りているから、数えない。数えること、数えないことは、こんなにも哀しい。ラスト4行は、「絡新婦の理」の冒頭に匹敵する美しさ。真っ暗な井戸にやっと浮かんだ、裏返しの星を思い、涙。2015/10/09
マツユキ
14
長いんだけど、読んでいるうちに、様々な登場人物の事を、分かるなあ、と、思ってしまう。 それぞれ、悪いんだけどね。最悪の結末だけど、何人かは納得していたのかな。やりきれないけど。面白かったです。2013/09/15
莉庭Reethi
11
★★★ちょっとした小箱のようなこの本の感触がたまりません。久しぶりにおどろおどろした独特なリズムというか京極節を堪能しました。江戸時代の怪談『番町皿屋敷』のストーリーを元に新解釈で書き直していて、巷説百物語の又市や徳次郎などが登場している。これはこれで楽しめたけど、むなしさの救いが見あたらないのがやりきれないこの限りではなく、やはり『鉄鼠の檻』や『嗤う伊右衛門 』のような神懸かった作品とは言いにくい。それでも、文章の美しさは音だけでなく、流麗な文字の配列にすら美学を感じました。2013/10/03
しずか
8
とにかく重かった…。内容も重量も。でもページ数がハンパない割に、するすると読めました。序文で、そういえば番町皿屋敷の怪談話を、実はあまり詳しく知らないことに思い至りました。皿を割って殺されたお菊さんが、幽霊となって皿を数える…ぐらい。よもやこんなに登場人物が出てくるとは…。そしてそれぞれが、数える数えない、欠けてる満ちてる…に固執している。なぜにそこまでというぐらいの異常さがかなり無気味。そして主役?の家宝の皿がなかなか出て来ないのもやきもき。有るのか無いのか。一体物語の結末はどこへ転がっていくのか…?2015/11/13
いの
6
日本三大怪談の一つ『皿屋敷』井戸から出て「いちま〜い、にま〜い、さんま〜い…」と皿を数えるお菊の物語が京極流に描かれる。 登場人物はみな「狂って」いる。もしかすると現世に常人など居ないのかもしれない。数えるから足りなくなる、欠けていると思う、ならば数えなければ良いのか、全てを壊してしまえば良いのか─。 菊は、全て自分が為たということで、ことが収まることを望む娘。執着のない娘。欠けた者や執着する者にとって、それは満たされ生きているようにも見えるのか。 最後、又市たちで語られる事の顛末が─悲しい。2021/04/26
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