出版社内容情報
失意の底から絞り出された短篇と詩、作家としての貴重な肉声を伝えるエッセイ。カーヴァー文学のエッセンスを抽出する自薦短篇集。
内容説明
初めて出会ったカーヴァー作品として、訳者を心酔させた「足もとに流れる深い川」ほか、大幅改変を経てより成熟したロング・ヴァージョン三篇を含む七短篇、カーヴァーの詩の世界への格好の招待状となる数々の詩、そして作家としての来し方を記す秀逸なエッセイ―多彩な魅力を凝縮する自選作品集。
目次
エッセイ(父の肖像;書くことについて;ファイアズ(炎) ほか)
詩(一杯やりながらドライブ;幸運;投げ売り ほか)
短篇(隔たり;嘘;キャビン ほか)
著者等紹介
カーヴァー,レイモンド[カーヴァー,レイモンド][Carver,Raymond]
1938年、オレゴン州生まれ。製材所勤務、病院の守衛、教科書編集などの職を転々とするかたわら執筆を始める。77年刊行の短篇集『頼むから静かにしてくれ』が全米図書賞候補、83年刊行の同『大聖堂』が全米批評家協会賞及びピュリッツァー賞候補となる。その独特の味わいの短篇作品はアメリカ文学界に衝撃を与え、後進の作家にも大きな影響を与えた。数々の短篇作品のほか詩人としての作品も多数。88年、肺癌のため死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kazi
35
エッセイに詩に短編とジャンルバラバラで一見とっ散らかったように見えるが、内容は質が高く読み手を唸らせます。特に冒頭のエッセイ、「父の肖像」「書くことについて」「ファイアズ(炎)」「ジョン・ガードナー、教師としての作家」は無駄のない硬質な文体の中に、カーヴァーの“書く”という仕事に対する誠実さが伺えて感銘を受けました。『結局のところ、ベストを尽くしたという満足感、精一杯働いたというあかし、我々が墓の中まで持っていけるのはそれだけである』確かに、どんな仕事でもそうだよね。その境地に達するのは容易ではないぞ。2022/02/26
くさてる
19
わたしにとってのカーヴァーは「足元に流れる深い川」の一作に尽きるので(それ以外にも好きな短篇はあるものの)、それが収録されているこの一冊はやはり素晴らしい。2016/11/23
MO
11
他の本にも重複して収録されている短編もありますが、何度読んでも味わい深い。本人も作品に手を入れるようで、以前読んだものと印象が違うのがあった。「足もとに流れる深い川」はこの本のが好き。子供の頃に感じた言葉にならない受け入れがたさ、と言う感情を思い出した。「アイザック・ディネーセンはこういった。私は、希望もなく絶望もなく、毎日ちょっとづつ書きます、と。いつか私はその言葉を小さなカードに書いて、机の横の壁に貼っておこうと思う。」2022/10/28
solaris
10
短編とエッセイ。エッセイは「書くこと」や「ジョン・ガードナー、教師としての作家」と表題作が読み応えあり。作家としてのカーヴァーの本音が聞ける。二十歳になる前に結婚し、二人の子を授かるが、毎日の生活の糧を得るための仕事と子育てに追われる。そんな日常が、私が日曜日にコインランドリーにいるときに悟らせる。本物の作家が心の中に持つ創造のファイアズ(炎)を、この忌々しい日常が奪ってしまった。ジョン・ガードナーはカーヴァーの創作学科、大学時代の恩師。適切な完璧な文章を書くことが作家の唯一の仕事。なんだか泣けてきた。2021/05/16
りん
8
「間もなく私の人生はまたもや向きを変え、急激に方向転換し、やがて引き込み支線の中に入って停止してしまった。」2017/09/29
-
- 電子書籍
- 人生の答えは家庭科に聞け! 岩波ジュニ…
-
- 電子書籍
- オークション・ハウス (27)