出版社内容情報
一級の文学としての力と品位を備えた成熟期の風格漂うカーヴァー最高の短篇集。「ささやかだけれど、役にたつこと」他名篇収録。
内容説明
表題作に加え、「ぼくが電話をかけている場所」「ささやかだけれど、役にたつこと」ほか、一級の文学としての深みと品位をそなえた、粒ぞろいの名篇を収録。成熟期の風格漂う、レイモンド・カーヴァー最高の短篇集。ライブラリー版刊行にあたり全面改訳。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
buchipanda3
108
「こんなときには、ものを食べることです。それはささやかなことですが、助けになります」。米文学作家カーヴァーの短篇集。良かった。何というか人生のある場面、岐路に立った時に、ふとそれらの話を思い出しそうな、そんな感覚が残った。他の人が素直な言葉で自らの人生を曝け出した時、自分も不思議と自身を素直に受け止められるような気がする。それは人生の苦味を共有したからだろうか。でもその共有は自分を次へ向かせるものになると思う。短いストーリー、飾り気のない文章、それなのに人間性の豊かな登場人物たちが胸の奥に深く沁み込んだ。2022/04/24
metoo
71
12編の短編。最後に訳者村上春樹の解説。カーヴァー3冊目。既読の短編はさらに奥行きを得た。なかでも「大聖堂」は訳者が「一級の文学としての力と品位を備えた優れた作品である。非のうちどころがない」と讃える。妻の友人が泊まりにくる。それも男で盲目。自分の知らない人が泊まりにくるだけで日常が非日常と変わるのに、加えて男性盲目者となれば夫は憂鬱だ。噛み合わない会話や食事が続き、お酒を飲んだ為か妻は客を放って眠ってしまう。リビングに取り残された二人の男。しかし最後には妻の入り込む隙間がない二人となる。2017/08/03
つーこ
63
初読みのレイモンド・カーヴァー。作家が描きたがるヒーローも出てこなければ奇跡も起こらない。人間の業とか偏見とか悲しみとか絶望とか。そういうのを恥ずかしげもなくさらけ出している。久しぶりに息子と会う為に列車に乗る男の話『コンバートメント』、息子を失った両親にパン屋が与えた焼きたてパンの『ささやかだけど役にたつこと』などが印象に残った。2022/01/16
Small World
34
初カーヴァーでしたが、面白かったです。「深夜プラス1」と続けて読んだのですが、アルコール依存症が重要な要素であることがシンクロしちゃいました。個人的には『熱』と『大聖堂』が温もりを感じられて好きです。他の作品も読んでみたくなりました。2016/10/30
ドン•マルロー
34
粒揃いの短編集とは思わない。むしろあらゆる箇所が極限まで削ぎ落とされた前作「愛について語るときに我々の語ること」の方が、登場人物たちの人生をよりリアルに感じさせる不思議な訴求力を備えていたように思われる。が、表題作の他「羽根」「ぼくが電話をかけている場所」は文句なく素晴らしい。人生にたちこめる暗雲とその間から些少な救済の光が木漏れ日のように差し込む一瞬間、そのコントラスト。それは全人生を照らすほどの光量をもたないが、目に見えぬ真理や実情を暴きだそうとする著者の揺るがぬ意志をありありと感じさせる光ではある。2016/04/23
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