内容説明
確かな史料解釈と巧みな構成で、草創期の鎌倉幕府を複数の歴史の担い手をとおして描き、直木賞を受賞した『炎環』のほか、三作収載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Hiroh
20
「絵巻」源平の闘いから後鳥羽院の時代までを連作短編と、信西の息子実在する静賢法印の架空の日記で繋ぐ。丹後局や卿二位など女性の視点が多く取り上げられている。とことん献身しても愛してはいない? 鼓の名手平知康も含め、それぞれの献身が描かれている。「執念の家系」三浦と北条の長い確執。途中で時代がとんだのに驚いた。三浦が裏切りをやめたとき、ついにその一族は滅びるのだ。「裾野」曽我兄弟の仇討。実はクーデター未遂、というのは昔からの説なのね。2022/07/23
めぐみこ
3
前巻と逆に頼朝周辺と鎌倉武士たちを描く。「炎環」創成期の鎌倉オムニバス。頼朝の弟・阿野全成、梶原景時、政子の妹・保子、同じく弟・北条義時の4人の姿が、読むにつれ、それぞれ響き合うように重なっていく。三篇め保子の無邪気さに隠した悪意にゾッとした。「絵巻」信西の子・静賢法師の日記と、後白河法皇周辺の人物の短編を交互に配す変化球。「執念の家譜」公暁暗殺三浦一族説。執念のために戦うって考えが鎌倉武士っぽい。。「裾野」曾我の仇討ち裏側。嘘つき十郎は何のために動いていたか、最後まで判らないのが彼らしい。2018/11/11
てり
1
歴史の主人公的人物ではなく、周辺の人物から鎌倉時代を描く作品たち。興味深く読めたが、どれも権力を巡る陰謀・策略に明け暮れお腹いっぱい。女性たちが多く描かれているのがよかった。2021/04/07