出版社内容情報
脚本家・唐沢燿子は古稀をむかえ、日に日に「老い」を実感していた。そんなある日、SNSで年下の男と出会い、生活が一変する。忘れかけていた自分の「女」の顔に戸惑いつつ、いつしか身も心も溺れていく燿子。人生後半から燃え上がる大人の恋の行方は……。センシュアルで真摯なラブストーリー。
70代女性の心と身体のリアルを描き話題を呼んだベストセラーが、ついに文庫化!
〈解説〉斎藤美奈子
内容説明
古希を迎えた脚本家・唐沢燿子は、迫りくる老いに不安を感じる一方、「穏やかな孤独」を受け入れていた。そんなある日、燿子のSNSに生真面目なメッセージが届く。「私は、札幌に住む一労働者です」。そこから始まった年下の男・蓮とのやりとりに生活は一変し―人生後半に訪れたときめきと、成熟した男女の性愛を描いた衝撃作。
著者等紹介
松井久子[マツイヒサコ]
1946年東京出身。早稲田大学文学部演劇科卒。雑誌ライター、テレビドラマのプロデューサーを経て、98年映画『ユキエ』で監督デビュー。21年に初小説となる本書を発表し、話題に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
こばまり
35
評判を耳にして飛び付けば、想像以上に生々しいのであった。作家の体験談かと下衆の勘繰りを反省するも、私小説というジャンルもあるしなどと、やはり勘繰ってしまうのであった。人生100年時代。恋愛寿命も延びているはず。骨になるまで女じゃわい。好きに生きた者勝ち。2024/12/14
takaC
20
チラ見のつもりで読み出したのに止めどころを失いすっかり全部読んじゃいました。前にも似たような話を読んだような気もするけど勘違いかな。2025/05/02
ぶんぶん
19
【図書館】続編「最後のひと」を読んでこちらに来た、「最後のひと」はどちらかと言うとセックスを遠ざけている小説だが、こちらは70歳のセックス感を前面に出している。 具体的に自慰のシーンや局部を舐められて興奮するシーンなど、高齢者でもこんなに気持ち良くなるのかと思わず興奮する次第です。 高齢者のセックス好きと言うよりは、ホルモン治療でいつまでもしたいと言う憧れに近い。 本当にこういう女性が居るのかは疑問だが、好きなら自由にすれば良いと思う。 確かに高齢者のセックスがタブーになっている社会ではある。2025/08/13
火星人碧
10
70歳になった女の性愛を、その切実な心情を、丁寧な描写で描き出していて、とても共感した。自分とは別の性を持つ女という人たちが、実はこんなことを考えたり葛藤したりしているのではないかと思っていたことが書かれている。トシをとっても疼く夜があってもいいと思う。諦めきれない何かが彼女らを突き動かすのか。読みたいと思ってすぐレジに向かった。女の切実な願いである以上これは不道徳ではないと思う。むしろ自然なのだ。こんな小説を読みたかった。わたしの好きな人もこんな思いを秘めているのだろうか。2025/02/04
カノープス
5
初読み作家。映画監督である著者が小説という舞台で作り上げた白い虚構。デビュー作とは思えないほど達者な書きぶりだ。古希の性愛だけがセンセーショナルに取り上げられるかもしれないが、巧みな心理小説として読んだ。人を想う様、心の変遷が丁寧に描かれる。どれだけ愛の言葉を交わしてももどかしい、そのもどかしさは変態的な行為に行き着くのだが、不思議と嫌悪感はない。そこには、もどかしさを越えて愛していることの証を見せたい男女の切実さがあるからだ。虚構の中のリアル。松井は勇気を持って大胆な愛の世界を見せる事に挑み、成功した。2024/11/27