出版社内容情報
手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、途中、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ――。
すれ違う母と娘の感動長篇。
〈解説〉夏目浩光
内容説明
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ―。傷つけながらも求め合う母娘の再生物語。
著者等紹介
町田そのこ[マチダソノコ]
1980年生まれ。「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞。2017年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ほのぼの
63
やっと読み終えた。何ヶ月かかったんだろう。DV、貧困、毒親…。つらい物語は今まで色々読んできたけど、読めなくなるほどツラくなったのは初めて。町田さんの作品だから覚悟して手に取ったはずなのに想定外のツラさだった。母と娘の葛藤。両者の想いはなぜこんなにもスレ違うのか。愛しているから、愛されたいから。そこに苦しくなるほどの愛が見え隠れしているのに、もどかしい。自分の人生は自分のものだけど、自分のためにだけ生きているわけではない。長くてツラい読書だった。でも、この本に出会えて良かったと思う。2025/07/01
セシルの夕陽
54
町田そのこ作品は、スッと頭に入ってきて脳内映像される。逆に息苦しさを味わうことも。冒頭一文に拘っているだけあって、すぐに引き込まれた。ラジオの「夏休みの思い出」に応募し準優勝、五万円を手にする芳野千鶴。その思い出は、幼い頃の母と2人旅と離別。千鶴は母に捨てられ、今は元夫からのDVと金の略奪に苦しんでいる。捨てられた、捨てた、代替えママの母娘関係に、介護、DVも絡め、内容は重い。「不幸を親のせいにしていいのは、せいぜい10代まで」「自分の人生を、誰かに責任取らせようとしちゃダメ」納得! 再生と希望の物語。2025/02/24
KEI
48
元夫にDVを受け絶望の淵にいる千鶴はラジオ番組をきっかけに22年前自分を捨てた母と再会する事に。しかし母は若年性認知症を患っていた。母・聖子が暮らす家で様々な事情で傷ついた女性たち恵真、彩子との共同生活を送ることで、自分の人生を見つめ直す。DV、認知症介護、10代の妊娠の問題を絡め内容は重い。刺さった言葉は『自分の人生を誰かに責任を取らせようとしちゃだめだよ』。最後にタイトルの意味が分かり、実際に母の認知症と付き合っている私にもキラキラした思い出を掬い取る時間が欲しいと思う。2025/02/09
piro
45
壮絶な物語でした。元夫のDVから逃げ出した千鶴が偶然の出会いから行き着いたさざめきハイツ。かつて自分を捨てた母・聖子との再会を果たすものの、母が若年性認知症を患うという現実が突きつけられます。あまりにも残酷な現実。それでもそれぞれの事情を抱えた恵真・彩子さんらとの共同生活を通じ、千鶴が少しずつ前に踏み出せたことは良かった。自分の人生が上手くいかないのは誰かのせいでは無い。そう思えた千鶴はきっと強くなれる。母への恨み、そして愛惜の想い。様々な思いが交錯する、考えさせらせる物語でした。2025/06/21
りぃぃ
45
再読だったけど、自分にも言われているような言葉にグサリとくる。思っていた形の再会とは違っていたかもしれないけど、会えて良かった。 そして、いつもながら、DVの描写が凄まじい。2025/03/14
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