出版社内容情報
手に掬い取れるものが、星のようにうつくしく輝きを放つものであればいい。
そのひとつに、わたしとの記憶もあったら、嬉しいな。
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。
「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、途中、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ――。
すれ違う母と娘の感動長篇。
〈解説〉夏目浩光
内容説明
千鶴が夫から逃げるために向かった「さざめきハイツ」には、かつて自分を捨てた母・聖子がいた。他の同居人は、家事を完璧に担う彩子と、聖子を理想の「母」と呼び慕う恵真。「普通」の家族関係を築けなかった者たちの奇妙な共同生活は、うまくいきかけたものの、聖子の病で終わりを告げ―。傷つけながらも求め合う母娘の再生物語。
著者等紹介
町田そのこ[マチダソノコ]
1980年生まれ。「カメルーンの青い魚」で第15回「女による女のためのR‐18文学賞」大賞を受賞。2017年に同作を含む『夜空に泳ぐチョコレートグラミー』でデビュー。『52ヘルツのクジラたち』で2021年本屋大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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背番号10@せばてん。
70
あの時、わたしが母の車に乗ると言っていたら、何か変わっていただろうか ──。小1で母と別れ、その傷みを引きずりながら、自らの弱さを糊塗する芳野千鶴。もちろん彼女の今が、凄惨であることは伝わりますが、他に責任を預けすぎる彼女は序盤、読み手の共感を拒んでいます。その彼女が向かう「さざめきハイツ」。恵真、彩子、認知症を患う52歳の母。近くにいる…と思えた途端、遠ざかる日々。それでも徐々に、変わりはじめる千鶴の思い。記憶の底の、星を掬う。行きなさい。生きなさい。家族を、過去を、鎖にせずに。2025/04/15
セシルの夕陽
54
町田そのこ作品は、スッと頭に入ってきて脳内映像される。逆に息苦しさを味わうことも。冒頭一文に拘っているだけあって、すぐに引き込まれた。ラジオの「夏休みの思い出」に応募し準優勝、五万円を手にする芳野千鶴。その思い出は、幼い頃の母と2人旅と離別。千鶴は母に捨てられ、今は元夫からのDVと金の略奪に苦しんでいる。捨てられた、捨てた、代替えママの母娘関係に、介護、DVも絡め、内容は重い。「不幸を親のせいにしていいのは、せいぜい10代まで」「自分の人生を、誰かに責任取らせようとしちゃダメ」納得! 再生と希望の物語。2025/02/24
KEI
48
元夫にDVを受け絶望の淵にいる千鶴はラジオ番組をきっかけに22年前自分を捨てた母と再会する事に。しかし母は若年性認知症を患っていた。母・聖子が暮らす家で様々な事情で傷ついた女性たち恵真、彩子との共同生活を送ることで、自分の人生を見つめ直す。DV、認知症介護、10代の妊娠の問題を絡め内容は重い。刺さった言葉は『自分の人生を誰かに責任を取らせようとしちゃだめだよ』。最後にタイトルの意味が分かり、実際に母の認知症と付き合っている私にもキラキラした思い出を掬い取る時間が欲しいと思う。2025/02/09
りぃぃ
39
再読だったけど、自分にも言われているような言葉にグサリとくる。思っていた形の再会とは違っていたかもしれないけど、会えて良かった。 そして、いつもながら、DVの描写が凄まじい。2025/03/14
ケ・セラ・セラ
35
母娘の問題、激しいDV、介護問題。救いがあるのだろうと思いつつも、冒頭から読むのが辛い。何処までも追いかけて来る恐怖に怯え、息を殺してページを捲る。登場する女性たちが、皆それぞれに重い鎖を背負って生きている。町田さん、虐待があまりに酷く辛いよ。「ひとにはそれぞれ人生がある。親だろうが、子どもだろうが、侵しちゃいけないところがある」学生時代からの友人が重度の若年性認知症で、話すことも自分で動くこともすでに出来ない状態で、また、私の両親も高齢で支援が必要で、いろいろな状況も重なって、この小説は重すぎました。2025/01/29