出版社内容情報
三重の田舎町の郵便局に勤める二十歳の女性が、都会への憧れを胸に、大阪・心斎橋の高級喫茶店のウェイトレスとなる。金と欲望が渦巻く都会の夜に、彼女を待ち受けるものは……。表題作ほか全七編。野心・嫉妬・愛憎……人間の情念と闇を鋭く描く、黒岩重吾の真骨頂! 文庫オリジナル。
*収録作
「賭博の街」「赤い肉は固い」「ぜいたくなホテル」「朝を待つ女」「人形の足跡」「心斎橋幻想」「仙見川の夜」
内容説明
三重の田舎町の郵便局に勤める二十歳の女性が、都会への憧れを胸に、大阪・心斎橋の高級喫茶店のウェイトレスとなる。金と欲望が渦巻く都会の夜に、彼女を待ち受けるものとは…。野心・嫉妬・愛憎にまみれた、人間の情念と闇を鋭く描く全七編。
著者等紹介
黒岩重吾[クロイワジュウゴ]
1924(大正13)年、大阪市生まれ。同志社大学法学部卒業。在学中に学徒動員で満州に出征、ソ満国境で敗戦を迎える。復員後、証券会社などに勤務しながら、「近代説話」の同人として小説を執筆。60年『背徳のメス』で直木賞、80年『天の川の太陽』で吉川英治文学賞を受賞する。91年紫綬褒章受章、92年菊池寛賞受賞。2003年死去
日下三蔵[クサカサンゾウ]
1968(昭和43)年、神奈川県生まれ。専修大学文学部卒。ミステリ・SF研究家、アンソロジスト。編書『天城一の密室犯罪学教程』で第五回本格ミステリ大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
52
心斎橋を舞台にした人間の欲と悲哀を巡る短編集。「賭博の街」の生き馬の目を抜く証券の世界にクラクラする。そこで働くも、うだつが揚がらず、損失した金の補填の為、妻が大切にしている時計を強奪するまで堕ちた男のなけなしの純情と意地。前者は泣き笑い、後者は何者にも縋らずに生きていけるという宣言のようで清々しい。「赤い肉は固い」は意外な探偵もの。酸いも甘いも噛み締めたと思い込んでいるロマンチストよりも慧眼なのは男女間の機微のリアリストぶりを肌身で感じている女性なのが小気味良い。中編「ぜいたくなホテル」は安西と兵頭氏の2024/01/17
Shoji
30
昭和の匂い漂う社会派ミステリー。いずれも大阪が舞台。とても面白かったです。昭和という時代背景、女性の地位は今ほど認められていない。どうしても、社会で活躍しようとすると、悪い奴らが悪い考えを巡らせて女に近寄ってくる。女は、それを真に受けてしまう。そんな男と女の人間模様。欲望や金に翻弄される姿が実に面白かった。2023/09/17
ゆう
11
昔の大阪にはこんなドラマがあったのかなと楽しく読めた。 知っている街の名前が出て来る事で、より想像を掻き立てられ物語に入り込めた2024/01/17
フリウリ
8
以前関西に住んでいたとき、黒岩重吾の弟子、と名乗るけったいなおっちゃんに幾度か、何かとお世話になりました。図書館でこの本を見て、そのおっちゃんを思い出して借りましたが、そのおっちゃんが好きそうな世界であるし、実際にこういう世間に生きてはったんやな、と思いました。小説としては、特に何もありませんが、思い出せたことがよい経験でした。52024/03/12
鷹ぼん
6
浪人中に読んだ同タイトルの講談社文庫版を思い出し、「わーい!復刊や!」と喜んだが表題作以外は全て別作品を収録。重吾のサスペンスものは最後の数行できれいにフィニッシュする。伏線回収とは少々違い、むしろ「ああ、やっぱりこうなるのか…」的なもので、返って主人公や登場人物への憐憫の思いを抱かせる終わり方をするのである。『贅沢なホテル』『朝を待つ女』『心斎橋幻想』が特に見事な締め方をしていて、思わず「はぁ…」とため息をつくほどだった。これを機に、押入れを発掘して、昔読んだ重吾の文庫本を改めて読み返してみようと思う。2023/08/31
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- 東京っ子ことば 文春文庫