出版社内容情報
ある日作家の自宅に迷い込んできたオスのトラ猫。ほどなく、作家と画家の姉が住むその家で飼われることになった。トラーと名づけられたその猫の自由かつ奔放な振る舞いと、それに振り回される二人の人間。猫愛の深みにもだえる日々を綴った、究極の猫エッセイ。トラーの死とその喪失を綴った3篇を増補した決定版。
〈解説〉桜井美穂子
【以下、本文より】
トラーの好物は平貝、タコ、赤貝、アオヤギと小岩井ヨーグルト・グルメファン(四〇〇g入り三八〇円)と焼いりこ(小魚を特殊製法で薄くパリパリに圧縮引きのばした、人間用のおつまみ。ちいさいのりの丸缶くらいの大きさで八八〇円)で、クール宅急便で取り寄せる魚では、メバル、カレイ、キス、ウマヅラハギ、アジが好きだけれど、なんといっても夢中になるのは甘エビで、これは伊勢エビなど無視するほどの大好物で十二匹はペロリとたいらげてしまう。猫などにこんな贅沢をさせていいのだろうか、と反省もするけれど、道で顔をあわせると、ン、グググ、と走り寄ってきて頬をこすりつける姿を見ていると、ヨシヨシ、冬には羽ぶとんを買ってやるからね、トラーちゃんは鳥を捕らえるの好きだから、などと、わけのわからない論理で甘やかすことに決めてしまう。
内容説明
画家の姉と作家の妹が暮らす家に、迷い込んできたオスのトラ猫。トラーと名づけられたその猫の自由かつ奔放な振る舞いと、振り回される二人の人間。すぐれた観察力で、猫愛の深みにもだえる日々を綴る。トラーを描いた挿画28点を収録。さらに、トラーの死とその喪失を綴った三篇を増補した決定版。
目次
トラ!トラ!トラ!
銀座の猫、家の猫
小さな虎さん
猫を飼う
遊興一匹
「トラー」とはどんな動物か
猫を去勢すること
散歩も出来ない
猫の戦略
猫には七軒の家がある〔ほか〕
著者等紹介
金井美恵子[カナイミエコ]
小説家。1947年、群馬県高崎市生まれ。67年、「愛の生活」でデビュー、同作品で現代詩手帖賞受賞。著書に『岸辺のない海』、『プラトン的恋愛』(泉鏡花賞)、『文章教室』、『タマや』(女流文学賞)、『カストロの尻』(芸術選奨文部科学大臣賞)、金井久美子氏との共著『たのしい暮しの断片』『シロかクロか、どちらにしてもトラ柄ではない』『鼎談集 金井姉妹のマッド・ティーパーティーへようこそ』など多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kieth文
阿部義彦
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