出版社内容情報
公爵西の丸秀彦の娘、氷見子は、父の元を訪れる客人の会話をひそかに記録している。父と来訪者の会話から、青年将校たちがひそかな計画を知る。蹶起に加わる兄、兄に思いを寄せる陸軍大臣の娘……。二・二六事件を背景に貴族と軍人との暗闘を描く。
内容説明
西の丸公爵の娘・氷見子は、父の秘密の記録係として客人の会話を筆記している。陸軍大臣との密談から、青年将校たちの蹶起計画を知った氷見子は…。公爵の息子でありながら蹶起に加わろうとする陸軍士官の兄、自ら悲劇の道へと身を投じる陸軍大臣の娘。二・二六事件前夜の貴族と軍人の暗闘を、不羈奔放な氷見子の目を通して描く。
著者等紹介
武田泰淳[タケダタイジュン]
1912(明治45)年、東京・本郷区の浄土宗の寺に生まれる。東京帝国大学支那文学科中退。僧侶としての体験、左翼運動、戦時下における中国体験が、思想的重量感を持つ作品群の起動点となつた。43(昭和18)年『司馬遷』を刊行、46年以後、戦後文学の代表的旗手として『蝮のすゑ』『ひかりごけ』『富士』など、数多くの作品を発表し、不滅の足跡を残した。73年『快楽』により日本文学大賞、76年『目まいのする散歩』で野間文芸賞を受賞。76(昭和51)年10月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あ げ こ
16
氷見子は勿論凄いのだし、語り手としてこの上なく賢くて目敏くて、自然物と通ずる身体的な感性も含めて魅力的な人物ではあるのだけれども、凄さで言えば大山のおかみさんの方が上であろうと思う。この小説が如何なる小説であるかを体現する存在としての大山のおかみさん。 悲劇をより血腥く、より報われない、完膚なきまでに悲劇である方へ。この小説を、或いはやがて迎える終章の悲劇性を傑出したものへと高めているのは、大山のおかみさんのその濁った白眼と、誰にも妨げられることなく通ってしまうその明快な言葉なのかもしれない、とさえ思う。2022/12/05
miaou_u
11
三島由紀夫が2.26事件を背景に描いた『英霊の聲』という短編小説がありますが、それはそれとして、また違う世界観ではあります。が。今、もし三島が文学としての、2.26事件を描いたら、、、というような印象を受けました。少女性や女性性だとか男性像だとか滅びの美学的なところだとか、、三島チックだなぁ。。と、ひとたび思ってしまうと、いまいち入り込めなかったのです。。。2023/03/09
バーベナ
2
2.26事件の背景となる貴族軍人たち。公爵の娘:氷見子はよなよな父と来客の会話を書き留める。氷見子のちゃっかりした性格が心強い。ラストは悲劇的なだけに、彼女のその後が知りたくなる。2023/03/27
isbm
1
★★★2023/05/05
好奇心
0
2.26事件を背景にした、仮装小説であった、西の丸秀彦は近衛文麿?猛田大将は東条英樹? 義人と節子が共に事件後に自害するのがなんともせつない・・・5.15・2.26事件国内不満反乱が続いた後に太平洋戦争へ突入した2022/11/09