出版社内容情報
『悪人』『怒り』の吉田修一が贈る感動の恋愛小説が、新たな装いで登場。
「君を守りたいなんて、傲慢なことを思っているわけでもない」「でも」「何もできないかもしれないけど」「そばにいてほしい」。テレビ局に勤める俊平は、公園で耳の不自由な女性・響子と出会う。穏やかな日々を重ねる二人だが、ある日、彼女は姿を消した。音によって住む世界を隔てられた二人に起きた奇跡とは?
内容説明
テレビ局に勤める俊平は、公園で出会った聴覚にハンディキャップを持つ女性・響子と恋に落ちる。静かで穏やかな日々を重ねる二人だが、音によって隔てられた世界は恋しさと戸惑いを同時に生み、やがてすれ違いが積み重なっていく。この気持ちは、本当に伝わるのか。言葉にならない思いが胸を震わせる、忘れられない恋愛小説。
著者等紹介
吉田修一[ヨシダシュウイチ]
1968年長崎県生まれ。97年『最後の息子』で文學界新人賞を受賞し、作家デビュー。2002年『パレード』で山本周五郎賞、『パーク・ライフ』で芥川賞、07年『悪人』で毎日出版文化賞と大佛次郎賞、10年『横道世之介』で柴田錬三郎賞、19年『国宝』で芸術選奨文部科学大臣賞、中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
76
新装版で初めて読了。聴覚に障害がある女性とテレビ局勤務の男性との恋愛を描いている。障害のあるなしではなく、人と人が分かり合うには何が大切かを探った作品だと思うが、男性があまりにも身勝手で、無理もないかなという展開。期待していた幸せな気持ちになれるような小説ではなく、寂しさが残った。それともここからがふたりの始まりなのかな。2022/03/03
となりのトウシロウ
54
聴覚障害の響子とテレビ局勤務の早川俊平。この二人を主軸にした恋愛小説。言葉で伝えることの難しさ、これは音の無い世界に住む響子へ何かを伝えるだけでなく、全ての人に通じるものがある。言葉にしても真意が伝わるとは限らない。でも、言葉にしないと伝わらない。「大丈夫だと思う気持ちはどこから来るのか」バーミヤン遺跡の大仏破壊と男女間のすれ違いを対比させ、何かを感じているのに、それを知ることや理解することの難しさがこれでもかと描かれている。人はそれぞれ感じ方も考えも違うんだ。俊平と響子がこの後どうなるのか想像は尽きない2022/12/31
カブ
51
テレビ局に勤める俊平と聴覚にハンディキャップを負っている響子との、出会いからその後を描く。伝えたい気持ちを上手く表現できない時、言葉をつくして伝えようとする。わかってくれているはず、わかってるつもり、そんなすれ違いが重なって相手を信じられなくなるのか。2022/03/15
三代目けんこと
39
聴覚にハンディキャップを持った女性との恋愛小説。2022/05/08
タピオカ
33
多忙を極める俊平が聴こえない響子と恋に落ちる。音に隔てられた世界が俊平目線で描かれる。伝えたいことがあるのに伝えきることができないもどかしさ。「私は私の大切な人のことをどこまで知っているのだろうか。」「なんとなく知っていることを。なんとなく知ったままにしていた。大変なんだろうなと思うだけで、その大変さを想像しなかった。」宇垣美里さんの解説がよかった。2022/11/02