出版社内容情報
学生運動の果てに行き着いた、過激派によるリンチ殺人と人質籠城事件。世間は学生だけでなく、親たちの責任も厳しく追及する。しかし、犯人の父親・鬼童子信之は「成人した子と親は別人格」として毅然とした態度を崩さない。その結果、家族には悲劇が訪れるが……。連合赤軍事件をモチーフに家族とは何かを問う、著者晩年の力作。〈解説〉篠田節子
内容説明
学生運動の果てに行き着いた、過激派によるリンチ殺人と人質籠城事件。世間は学生だけでなく、親たちの責任も厳しく追及する。しかし、犯人の父親・鬼童子信之は「成人した子と親は別人格」として毅然とした態度を貫く。その結果、家族には悲劇が訪れるが…。連合赤軍事件をモチーフに個人と社会のあり方を問う著者晩年の意欲作。
著者等紹介
円地文子[エンチフミコ]
1905(明治38)年東京生まれ。小説家、劇作家。国語学者・上田万年の次女。日本女子大附属高等女学校中退。豊かな古典の教養をもとに女性の執念や業を描いた。作品に『女坂』(野間文芸賞)、『虹と修羅』(谷崎潤一郎賞)、『なまみこ物語』(女流文学賞)、『遊魂』(日本文学大賞)など。また『源氏物語』の現代語訳でも知られる。85(昭和60)年文化勲章受章。86年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
67
連合赤軍をモチーフに殺人者となった息子と己の価値観に忠実なその父親、そして母と娘の家庭を描いた一冊。最近は加害者家族を描いた本が多数出ている為にそれに先鞭をつけた本かと思っていたのだが、事件が発覚してからある程度の時間を置いているので加害者家族が直面する世間の目というものにはあまり重きを置いて書かれていない。主な主題となっているのは個人主義を標榜する父親の行動なのであるが、個人主義なのは息子に対してだけで後はどうも中途半端な気がする。当時の価値観と今の価値観は違っているのだろうし、時代を描くのは難しい。2022/01/30
ゆきらぱ
31
今年は浅間山荘の事件からちょうど50年だそうです。この「食卓のない家」は事件から6年後に新聞で連載されました。今思っても稀に見る血生臭い事件です。物語は事件そのものではなく、事件後の加害者の家族の様子、特に父権に焦点があてられています。加害者とその家族は別物だと父親は考える。それはそれでいいのですが妻は別の考えなのは認めない、というか我慢させる。ここに矛盾を見た気がします。妻が精神的に弱ってしまったのでこの夫は大事にしていましたが、もし逆らって行動に移したらどうだったのでしょうか。2022/04/04
こうすけ
24
柄谷行人絶賛の本作。浅間山荘事件を題材にした家族の物語。といっても、背表紙に書いてあるあらすじは本編には出てこず、物語はその先から、つまりクライマックスのあとからはじまる。が、それが妙にいい。そして読める。ぐんぐん読める。家族の形というものを、いろいろなタイプのキャラクターやパターンを出しながらがつがつ掘り下げていく。が、その描き方が深いので、決してそれぞれが類型化しては見えない。それにしても、こんな結末は予想してなかった。爽やかなような、救いのないような……。この小説は喰らいます。2024/11/06
泉を乱す
13
浅間山荘事件から50年ということもあり、そして犯人とその家庭環境が話題になる事件が多く今年はよく新聞等々で取り上げられる作品だ。赤軍関連は興味深いテーマなのでより一層気になっていた。 一読じゃこの描写/人物いるか?と思う箇所もあったけど、解説のおかげで成る程な、と納得。主人公の頑固さとの勝負をしてるつもりで一気読みでした。2022/09/06
ぱんちょ
5
あさま山荘事件を題材にした、家族崩壊の物語。自分だったら…なんて想像に至らないくらい境遇も時代も違うけど、鬼道子信之は強い人なんだというのは、そうなんだな、って感じた。あと喜和が魅力的で、自分の中では主人公。2023/04/25