出版社内容情報
文学とユーモアエッセイ、二つのジャンルで人気を博した作家・北杜夫。その一九五六年から八三年の間に発表された作品群から作者自身のセレクトによる全一〇篇を収める。三島由紀夫賞賛の表題作「岩尾根にて」ほか初期の純文学作品、SF風の寓話「不倫」、随筆「死」まで多才な作家のエッセンスが一望できる自選短篇集。〈巻末エッセイ〉今野 敏
内容説明
文学とユーモアエッセイ、二つのジャンルで人気を博した作家・北杜夫。その一九五六年から六八年の間に発表された作品群から作者自身のセレクトによる全一〇篇を収める。三島由紀夫賞賛の表題作や、「岩尾根にて」ほか初期の純文学作品、SF作品「不倫」、随筆「死」まで多才な作家のエッセンスが一望できる自選短篇集。
著者等紹介
北杜夫[キタモリオ]
1927(昭和2)年、東京生まれ。父は歌人・斎藤茂吉。52年、東北大学医学部卒業。神経科専攻。医学博士。60年、『どくとるマンボウ航海記』が大ベストセラーとなりシリーズ化。同年『夜と霧の隅で』で第四三回芥川賞受賞。2011(平成23)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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佐島楓
72
北杜夫の純文学作品集。収録されている作品は霧のモチーフに代表されるように、夢と現実のあわいを漂っているような、少し酔っているような感じが「明晰に」書かれているのが面白い。父・斎藤茂吉を描写した「死」という随筆も初めて読んだが、医者が医者である父の遺体と対面するとこういう視点になるのか、という複雑な気持ちになった。北先生が動物学者を志していたこともここで初めて知った。2021/08/23
たつや
3
北杜夫は「楡家の人びと」がすこぶる面白かったが、この自薦短編集は趣きが違い、独特の世界が展開されているが、味わい深くもあるので、北杜夫の世界として受け入れつつ、愉しんだ。2023/11/17
JVSTINVS
3
篠田一士が解説で書いているようにリーダブルなのだが、それと同時に奇妙な味がする。かなり奇妙な味がして、不穏な空気が流れ、なにかの幻視がされている。それが明快なことばで描かれるのは一層不気味である。「河口にて」「黄いろい船」が個人的にはお気に入りだろうか。2023/09/30
kikizo
2
北杜夫の作品で一番最初に読んだのが「船乗りクプクプの冒険」そこから一気に嵌り、ほぼ全作読んだ。ただ、当時中学生だった僕には、理解できない作品が多かったような気がする。今改めて自選短編集を読むと、あのころとは全く違う印象を持った。やっぱり北杜夫は素晴らしい!また他の書も読み直そうかな。2021/10/23
you
1
中高生のころ、星新一とともにどくとるマンボウシリーズをよく読んだ。が、こんな文章書く人だった?とそのころの印象とは異なる大人の北杜夫だった。前半は展開がよく分からないものもあったが、「谿間にて」「死」「静謐」等面白いものもチラホラ。2021/09/14