出版社内容情報
命を懸けて「江戸落語」を創った男・鹿野武左衛門。その謎と波瀾
に満ちた半生が今、明らかに!――17世紀末、主人公は“江戸落語
の始祖”といわれた鹿野武左衛門。しかし、落語家になる前の武左
衛門はうだつのあがらない塗師だった……男はどうして落語家にな
ったのか? 五代将軍徳川綱吉による言論弾圧の下、命を狙われながら決死の思いで「笑い」を追究した男の人生とは? 謎多き武左衛門の人生を著者が大胆不敵に物語る。
内容説明
口下手の甲斐性なしが「江戸落語の始祖」!?覚えなき殺人罪で京から江戸に追われた鹿野武左衛門。仇討ちの恐怖に怯える中、馬鹿咄をする才を見いだされ、崖っぷち人生が変わっていく。将軍綱吉による激しい言論弾圧やコレラの騒乱に抗い、命を賭して“笑い”を生んだ伝説的咄家の知られざる物語。
著者等紹介
奥山景布子[オクヤマキョウコ]
1966年愛知県生まれ。名古屋大学大学院文学研究科博士課程修了。文学博士。高校教諭、大学専任講師などを経て創作を始める。2007年に「平家蟹異聞」で第八七回オール讀物新人賞を受賞。09年、受賞作を含む『源平六花撰』で単行本デビュー。18年、『葵の残葉』で第三七回新田次郎文学賞、第八回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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タイ子
87
江戸落語を誕生させた一人の男の物語。男の名前は鹿野武左衛門。京で不器用ながら塗師をやっていたが、ある日突然いわれなき殺人の罪を着せられ、江戸に逃げてきた。いつ仇討が追ってくるやもと恐怖に怯えながらも、京で聞いていた噺をお座敷で披露するうち周りの画師たちから才能を見出される。仇討ちが江戸まで追ってきてその後の話が面白い。時は将軍綱吉の時代、何もかもが取り締まりの厳しい中で落語も言論弾圧で仲間は死罪、武左衛門は牢の中に。初めての事を世間に流布させる意気込みは時として命を懸けて闘うことなのかもしれない。面白い!2021/02/23
fwhd8325
57
とてもテンポよく面白く読みました。落語の場合「はなし」というと噺をあてて読みますが、口偏に新しい。まさにこの物語のようです。2022/04/19
reo
21
落語の始まりは北野天満宮の露の五郎兵衛、生玉神社で人気を博した米沢彦八だと、今は亡き人間国宝桂米朝師が噺のマクラで使っていたのを思い出します。ところがこの鹿野武左衛門が江戸落語の始祖だったのだとは知らなんだ。本書だが目次に「三枚起請」や「花見の仇討ち」などを入れ、登場人物も「お見立て」「五人廻し」で情のない花魁の第一人者喜瀬川や「たらちね」の清女とか「妾馬」の一説を挿入したり。落語好きなら思わずニンマリするシーンがそこかしこに散りばめられており、著者氏の落語の造詣の深さが滲み出ている一冊になっております。2022/01/25
ともこ
18
京から江戸に下り、江戸落語の始祖となった鹿野武左衛門。その波乱に富んだ人生をたぶん虚実入り混ぜているのだろうがとても楽しく読んだ。「面白きは面白き」を追求する武平本人だけでなく絵師仲間の流宣・師重・朝湖それぞれが魅力的で、彼らの描いた浮世絵も見てみたい。今も聞く落語の題材となっている咄も多く、落語好きには嬉しい。すぐにも寄席に行きたくなった。江戸から京へ戻った武平の「べらんめぇ、でんがな」最後の落ちに拍手! 2022/08/24
Masakazu Fujino
15
そういえば、大阪に行った時、生玉神社に米澤彦八の坐像があったことを思い出した。江戸落語の始祖と言われている鹿野武左衛門が、京都か大坂生まれという話は知らなかった。なかなか楽しい話で虚実ないまぜ落語混じりの話。 2022/03/01
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