出版社内容情報
羽猫家は、みんな「嘘つき」である――。
空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、その全てに反発する姉、そして思い付きで動く適当な祖父と比較的まともな祖母。
そんな家の長男として生まれた山吹は、幼い頃から皆に合わせて成長してきた。だけど大人になり彼らの《嘘》がほどかれたとき、本当の家族の姿が見えてきて――?
これは破綻した嘘をつき続けた家族の、とある素敵な物語!
注目作家・寺地はるなの人気作、遂に文庫化!
内容説明
空想の世界に生きる母、愛人の元に逃げる父、その全てに反発する姉、そして思い付きで動く適当な祖父と比較的まともな祖母。そんな家の長男として生まれた山吹は、幼い頃から皆に合わせて成長してきた。だけど大人になり彼らの“嘘”がほどかれたとき、本当の家族の姿が見えてきて―?破綻した嘘をつき続けた家族の、とある素敵な物語!
著者等紹介
寺地はるな[テラチハルナ]
1977年佐賀県生まれ。2014年に『ビオレタ』で第4回ポプラ社小説新人賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ショースケ
129
結論からと言うと非常に面白かった。心持って行かれた。寺地さんの本で一番好きかもしれない。『この家にはまともな大人がひとりもいない』という文章から始まる羽猫家の30年に渡る物語。夢みたいな事ばかり実行しようとする祖父とまだまともだが商売では嘘を平気でついている祖母、浮気相手に入り浸りの父と4歳の3番目の子を亡くし現実世界に生きれない母、その中でいつもイラついている姉、羽猫山吹という名前を呪う僕。面倒くさい人達の愛すべき面倒くさい人生。タイトルは読み終わって納得。鼻の奥がツンとした。人間って可愛いな。2025/05/24
黒瀬
126
破綻した、あるいは優しい嘘を吐き続けた善人でも悪人でもない家族の物語。幼い三男を亡くして空想の世界に逃げる母、愛人の元に転がり込む父、そんな両親に反発する姉etc…。どこの世界にもいて必要以上に踏み込みもせず、かといって傍観し切り捨てることも出来ない人間臭さを感じさせる彼らの生き方が好きだ。時として必要になる優しい嘘は一度使ってしまったら最後まで貫き通すべきか否か。2021/08/04
nyaoko
66
出ている作品全部読みたい寺地さん。これは購入本。不思議なタイトル。架空の犬って?嘘つきな猫って?もう読む前から心を捕まれてます。羽猫家の人々の30年間の物語。普通ではない親がいる事の寂しさと辛さは少し分かる。そんな親でも大事にしようと健気な嘘をつく息子・山吹と、正反対の気質の姉の紅。紅の生き辛さや容量の悪さは読んでいて自分みたいで痛かった。2人の孫を親代わりに育てた祖母の言葉が印象深い。2021/05/13
mayu
60
4歳で命を落とした弟。この出来事により、少しずつ歪みが生じ、家族の形が損なわれていく。悪人ではない、だけど、正しい行いばかりはできない、普通の人たち。嘘をつかなければ立ち直れないほどの真実もある。相手を思ってついた優しい嘘のはずが、相手をどうしようもなく傷つけることもある。苦しくて仕方なくて目を背ける時もあったけれど、ゆっくりとまた向き合って、お互いに少しずつ近づいて、家族として結びついていく、そんな30年。子供時代に悲しい思いをしていた紅と山吹が、それぞれの幸せを見つけられたのも良かったと思う。2024/10/21
さおり
59
私の2018年おすすめランキング1位本。文庫で再読しました。初読のときは後半どろどろに泣いてたんだけど、今回は展開がわかっているため、はじめの10ページで既に涙ぐむ事態。けど全体的には、泣くよりも笑う方が多かった。これは、3年を経て私が少し変わったからかもしれなくて、ちょっと嬉しい。主人公の山吹は、不憫な子ども時代を過ごす。架空の犬を撫で、嘘をついたりつかれたり。大人になってからの、頼といるときの山吹がとても好きだ。読了後、あのシーンがもう一度読みたいな、と行ったり来たりを繰り返す。幸福な読書時間でした。2021/07/26