出版社内容情報
一八九〇(明治二三)年、東洋初の憲法の下での最初の衆議院議員総選挙が実施された。選挙の結果は反政府派の民権派議員が過半数の議席を獲得。帝国議会は、打倒藩閥政治を叫ぶ民党と政府が正面衝突し対立を繰り返した。両者が歩み寄る機会となったのは、九四年に開戦を迎えた日清戦争だった。日清戦争後、列強の利益獲得競争は清国ばかりでなく韓国にも及び、とりわけ日本とロシアがしのぎを削った。独立自衛のための生命線確保を目指し大陸への膨張政策を取り始めた日本にとって、大国ロシアの南下政策が大きな脅威となっていく。その状況下、日本はロシア牽制のため英国との同盟を模索するが……。
原案執筆・伊藤 隆
〈目次より〉
序 章 初めての総選挙
第一章 アジア初の議会政治
第二章 列強と日清戦争
第三章 内外の戦後経営
間 章 義和団、跳梁す
第四章 日露戦争前の日本
第五章 日露戦争と戦時下の日本
第六章 近代化・産業化への歩み
解説 武田知己
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
totuboy
2
明治期に藩閥政治を妥当し、民主主義を求めた人々の熱い戦いが描かれる。石ノ森氏が描く歴史は、政治に重きが置かれている部分があり、民衆よりも政府内の対立が詳しく描かれているのが特徴だと思う。予算を成立させないことで政権をつぶしていく当時の抗争も読んでいて非常に興味深かった。2022/05/12
むっち
1
以前から気になっていた漫画日本の歴史が文庫で再編されたのを書店で知って、明治維新から大日本帝国成立までを一気に読んでみた。レベルが高いと思った。時代に生きた人たちも様々な論調で混沌としている中で歴史が作られてきたのを当時の作家の日記や世間ではやる歌や、政治家の残した言葉というミクロな出来事を踏まえて示しているのに感心した。最近勢いを増しているナショナリズム的な戦後の歴史記述を「自虐史観」などと価値的に評価して切り捨てて、結局、自らの価値観を主張するような歴史教科書よりもはるかに中立的で価値があると思う。2022/08/15