出版社内容情報
髪を下ろした松姫は信松尼と名を改め、一族の菩提を弔いながら後半生を送り、やがて将軍家の若君の出生に立ち会う。傑作歴史長編。〈解説〉三角美冬
内容説明
松姫あらため信松尼は、武田家の遺臣や近在の農民たちに支えられながら、生計を立てるべく養蚕と機織り、そして藍染めを学び始めた。やがて異母姉・見性院の依頼により、将軍家の若君、のちの保科正之の出生に立ち会うことになる―。著者積年の構想が結実した史伝文芸の傑作。
著者等紹介
中村彰彦[ナカムラアキヒコ]
1949年、栃木県栃木市生まれ。東北大学文学部卒業後、文藝春秋に勤務。87年に『明治新選組』で第一〇回エンタテインメント小説大賞を受賞。91年より執筆活動に専念し、93年に『五左衛門坂の敵討』で第一回中山義秀文学賞、94年に『二つの山河』で第一一一回直木賞、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第二四回新田次郎文学賞を受賞。また2015年には第四回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きょ
5
文庫版の下巻は、姫の養蚕に対する取り組みや、またしても権力争いに巻き込まれるお付きの人達のお話。実在の人物としての松姫が浮かんでくる。舞台となる八王子には、浅からぬ縁もあり、血が騒ぐというか、不思議な気持ちで読んだ。徳川家と武田家の縁、実際にはもっといろいろなことがあったんだろうな、そんな想像をしながら、就寝時間も遅れる読書だった。いつの日か、ゆかりの寺を訪れてみたい。松姫のように、済んだ心で日々の関心ごとに向き合っていきたくなった。2020/11/10
大喜多さん
2
下巻では、姉の見性院と、徳川秀忠の子ども(庶子)の出産に協力します。その子どもが保科正之になるのだから、歴史の繋がりは凄い。大久保長安や千人同心との関係など興味深く読みました。ただ、史実なのかフィクションなのか区別がつかなかったので、きちんと勉強しようと思います。2021/09/02
北刻堂
0
凄惨な戦をかいくぐっての逃避行といった上巻の過酷な状況から一転、出家した信松尼は、武田の遺臣達の庇護を受けながら、比較的穏やかな暮らしを営んでいた。とは言っても、この人、結構活発な性格なのか、養蚕、製糸、藍染め、機織りと次々チャレンジして自活する術を身につけていく。縁の寺、信松院は八王子に今もあると言うことなので、機会あれば訪ねてみようかな・・・・・2022/10/26