出版社内容情報
信玄の五女として生まれた松姫は、織田軍の侵攻による武田家滅亡の直前、かろうじて甲州を脱出した。非運のなか凜然として生きた美貌の姫君の生涯を描く。
内容説明
天正十年(一五八二)三月、圧倒的な兵力を擁する織田軍の侵攻により甲州武田家は滅亡。信玄の五女・松姫は苦難の末、笹子峠を越えて八王子に逃れ、一族の菩提を弔うべく髪を下ろし信松尼と名を改める―。非運に堪えて、たおやかにそして凛然として生きた美貌の姫君の生涯を描く歴史長篇。
著者等紹介
中村彰彦[ナカムラアキヒコ]
1949年、栃木県栃木市生まれ。東北大学文学部卒業後、文藝春秋に勤務。87年に『明治新選組』で第一〇回エンタテインメント小説大賞を受賞。91年より執筆活動に専念し、93年に『五左衛門坂の敵討』で第一回中山義秀文学賞、94年に『二つの山河』で第一一一回直木賞、2005年に『落花は枝に還らずとも』で第二四回新田次郎文学賞を受賞。また2015年には第四回歴史時代作家クラブ賞実績功労賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きょ
4
武田信玄の御息女、松姫様のお話。大月と小菅の間に「松姫峠」という峠があり、八王子の従姉がその峠を教えてくれた。松姫?本当に居たのかしらと、その頃は詳しく知らずにいた。実在の人物で、八王子では有名だとか。戦国時代の、まさに疾風に翻弄され、数奇な運命をたどる姫君。ロマンがいっぱいだ。とはいえ、難しい言葉や耳慣れない語句も多く、読み応えがあった。人徳がある姫は、多くの人の加護を受けて、逃げ延びた八王子に根づき、養蚕、織物の発展に寄与したという。上巻は迫力のある戦国時代の様子に圧倒される。2020/11/09
大喜多さん
2
松姫とはまたマイナーな、でも八王子に縁がある人物なので、気になり読みました。武田信玄の娘で、武田家滅亡の折、八王子に逃げて来たということしか知らなかったので、経緯が分かって良かったです。同母兄の仁科盛信が高遠で散った件はおもしろかったですが、ここまで描かなくてもよかったような。下巻で八王子でどんな生涯を送るのか楽しみ。2021/08/28
北刻堂
0
武田信玄の末娘、松姫の足跡を実地踏査している友人のブログに触発されて読み始めた。 織田信長尾によって殲滅された武田家の血を引く松姫の逃避行。そう言えば、大月から小菅へ抜ける山道に松姫峠という名の峠があったな。甲州街道を避けて逃げ落ちねばならなかった松姫が通ったルートだったのだな。 逃げ延びた先でも、庇護してもらっていた北条家が秀吉に滅ぼされてしまい、さらに苦難の予感を匂わせて下巻へ続く2022/10/22