出版社内容情報
時は七世紀末。先の大王から疎まれ、不遇の時を過ごした藤原不比等。彼の胸には、畏しき野望が秘められていた。それは、「日本書紀」という名の神話を創り上げ、天皇を神にすること。そして自らも神となることで、藤原家に永遠の繁栄をもたらすことであった。万世一系、天孫降臨、聖徳太子――すべてはこの男がつくり出した。古代史に隠された闇を抉り出す、著者初の歴史小説にして会心作!
内容説明
万世一系、天孫降臨、聖徳太子―すべてはこの男がつくり出した。藤原史(のちの不比等)が胸に秘めた野望、それは「日本書紀」という名の神話を創り上げ、天皇を神にすること。そして自らも神の一族となることで、永遠の繁栄を手にすることであった。古代史に隠された闇を抉り出す会心作。“巻末対談”里中満智子×馳星周。
著者等紹介
馳星周[ハセセイシュウ]
1965年北海道生まれ。横浜市立大学卒業。出版社勤務を経てフリーライターになる。96年『不夜城』で小説家デビュー。同作品で第一八回吉川英治文学新人賞、98年『鎮魂歌―不夜城2』で第五一回日本推理作家協会賞、99年に『漂流街』で第一回大藪春彦賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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修一朗
116
藤原不比等の物語,ずっと読みたかったんです。壬申の乱から聖武天皇までの歴史はまさにこの人が回したのだ。戦争のシーンほぼなく権謀術数の限りを尽くしてのフィクサーぶり。日本書紀は兄弟継承だった皇位継承を父子直系の継承に切り替えるため,古事記は祖母孫継承の史実を神話として正統化するため,というプロデューサー不比等が面白かった。平城京遷都もやり遂げ,権謀術数のメインは政略結婚でしかも血族結婚ばっかり,近場で繰り広げられる権力闘争はとてもややこしい。この後の話もぜひ読みたい。 2024/01/28
ALATA
75
歴史の闇に隠された影のフィクサー、藤原不比等。玉座をめぐる氏族の争い、万世一系のしがらみに火花を散らす政ごとに策謀を巡らせるところがなかなか面白い。蘇我氏の功績をなきものにし、厩戸王を正史に祭り上げた日本書紀、不比等の黒い欲望、権力への渇望感に読み応えがありました。それにしても持統天皇、子や孫へ皇位継承を探るところは母親としての執念を感じる。★5※死してなお、藤原の栄華を望む、等しく比ぶ者なき。高天原はいずこ…2024/12/02
k5
69
馳星周月間⑥。馳星周✖️古代史。しかも主人公は藤原不比等ということです、期待は否が応でも高まります。そう言えば私が子どもの頃、『宇宙皇子』ってラノベがあってこの時代を扱ってたり、『火の鳥 鳳凰篇』が映画化されてたりして古代史テーマけっこう流行ってたと思うんですが、最近見ないっすね。さて、本作ですが、雰囲気出ていて歴史小説として成立していると思うものの、平板さは否めず。作中で30年の時間が流れているんだけれども、天皇の交替でしかそれを感じられない難はあります。でもまた古代史やってほしいです!2022/10/15
pohcho
58
古代歴史小説。夫と息子を失った鸕野讚良(後の持統天皇)が孫を玉座につけるために藤原不比等と手をんだその時から不比等の大いなる野心に火がついた。万世一系、日本書紀、聖徳太子。今ではゆるぎない日本の根幹の部分がすべて一人の男によって作られたものだったとしたら・・。前例破りやねつ造であったとしても、時がたてばそれが真実になってしまう恐ろしさ。この時代のことは壬申の乱くらいしか知らなかったけどぞくぞくするほど面白くてびっくりした。あとがき(里中満智子さんとの対談)も豪華。4人の息子達を描いた続編も楽しみ。2020/09/16
巨峰
57
今の日本という国の形を整えた1人でもある藤原不比等。そのわりにはそんなに人気がないのは疑問だったが、この小説を読んで理由がわかった。彼は武力を用いずに物事を解決する。渾身の政治家なのだ。2021/09/16