出版社内容情報
川は生きている――。上空から川上から川下まで眺め、水源へと向かい、流域の町々を歩き、歴史をさかのぼる。川の流れに魅せられた著者が踏査したユニークな利根川紀行。そのほか、太平洋戦争の末期に空襲前の東京の面影を唯一とどめていた隅田川について綴った好エッセイ二編を収める。
内容説明
川は生きている―。上空より川上から川下まで眺め、水源へと向かい、流域の町々を歩き、歴史をさかのぼる。川の流れに魅せられた著者が踏査したユニークな利根川紀行。太平洋戦争末期に大空襲前の東京の面影を唯一とどめていた隅田川。その思い出を綴った好エッセイ二編を併せて収める。
目次
利根川(空から;水源へ;湯の花温泉;藤原;沼田 ほか)
隅田川(隅田川;新隅田川叙情)
著者等紹介
安岡章太郎[ヤスオカショウタロウ]
1920(大正9)年、高知市生まれ。慶應義塾大学在学中に入営、結核を患う。53年「陰気な愉しみ」「悪い仲間」で芥川賞受賞。吉行淳之介、遠藤周作らとともに「第三の新人」と目された。60年『海辺の光景』で芸術選奨文部大臣賞・野間文芸賞、82年『流離譚』で日本文学大賞、91年「伯父の墓地」で川端康成文学賞を受賞。2013(平成25)年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Tadashi_N
25
改造される前の利根川とその流域に住む人々の生活。水質汚染が最も酷い頃の隅田川。2020/10/13
DEE
13
江戸城を水攻めから守るために流れを変えられた利根川。かなりの暴れ川で計画通りに行くはずもなく、収まるべくしてなんとなく治ったのが現在の形らしい。そしてひたすら汚くて目が痛くなるほど臭かった隅田川。 川の歴史とそこでの人々の暮らしが綴られている。当時の川沿いの雰囲気を楽しめた。 それにしても政治家が働かないのは昔も同じだったようだ。2020/07/14
雲をみるひと
10
安岡章太郎氏の利根川流域の紀行文、エッセイ。出自は前回の東京オリンピックの頃の週刊誌連載。江戸時代初期の利根川流路変更から当時までの出来事とそれに対する作者の考えから構成されている。環境破壊や公害、人工的な流路変更による流水不足などの影響、水源不足による水不足など当時の東京の水関連の社会問題がよくわかる。2020/02/29
アメヲトコ
7
1966年単行本刊、2020年復刊。書店で出会って購入しましたが、安岡章太郎がこのようなルポを書いていたとは知りませんでした。利根川とその流域を最上流から下流を歩き、関東における川の存在を見つめる内容ですが、沼田ダム建設を見据えて観光開発に狂奔する地元のありよう、なお残る足尾鉱毒事件の爪痕など、当時の川をめぐる空気感がよく分かります。隅田川などはヘドロが沈滞して、満潮時になると銀座にまで汚穢の悪臭が押し寄せていたとはまことに凄まじく、そんな時代に都市における川の重要性を指摘した著者の先見性は光ります。2023/10/16
ままごん
3
関東に住んでいて、その恩恵にあずかっていても、利根川や隅田川の流路がその時代によって付け替えられているのは、なかなか理解できない。どんだけの難工事を、パソコンや重機もなくて、人力だけで成し遂げてきたのか。渡瀬遊水地が足尾鉱毒事件に絡んで造られた話も驚いた。50年も前の著書だけど、いま読んでみても、とてもおもしろくて、ためになった。2020/08/03