出版社内容情報
雪が降る。加賀の雪は、赤い雪だ。
雪中に翻るは、「風」の旗――。
戦国の乱世に、加賀の地において
百年にわたって独立国家を成した「百姓ノ持チタル国」
――その誕生前夜に、北方文学が挑む!
「これぞわが心の記念碑」(北方謙三)
内容説明
蓮如の吉崎退去、小十郎の恋、そして守護・政親の強権。戦場を覆い尽す念仏が、かつて共に闘った者たちを、別々の明日に追い立ててゆく。加賀の雪が、ふたたび血に染まる時が近づいていた―著者積年の構想がついに結実、加賀一向一揆を生きた男たちの雄叫びがこだまする感動巨篇、完結!
著者等紹介
北方謙三[キタカタケンゾウ]
1947年、佐賀県唐津市に生まれる。73年、中央大学法学部を卒業。81年、ハードボイルド小説『弔鐘はるかなり』で注目を集め、83年『眠りなき夜』で吉川英治文学新人賞、85年『渇きの街』で日本推理作家協会賞を受賞。89年『武王の門』で歴史小説にも進出、91年に『破軍の星』で柴田錬三郎賞、2004年に『楊家将』で吉川英治文学賞など数々の受賞を誇る。13年に紫綬褒章受章、16年に「大水滸伝」シリーズ(全五十一巻)で菊池寛賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
眠る山猫屋
49
加賀を席巻する一向一揆をきっかけに、拗らせていく守護と地侍たちの対立。それぞれの正義。風谷小十郎はやっぱり優等生過ぎる。許嫁を殺されても幼馴染と剣を交えても、加賀の未来を俯瞰しようとする。狂気のごとく猛進する守護・冨樫や領内の僧・蓮光たちの方が共感し易い。今までの北方作品なら、叶わぬ夢を追う冨樫辺りが主人公だっただろう。それでも葛藤し続ける小十郎の絶望と未来こそが、人間の可能性なのかな。もっと深く長く読み解きたい物語だった。2021/06/08
優希
44
戦場が別々の明日へと誘っているようでした。かつて共に闘った人たちが離れていくのが歴史の波というものなのでしょうか。そして再び血の流れる時へと向かう。加賀の一向一揆の時代を生きた男たちの姿が刺さります。2022/03/20
フミ
18
応仁の乱の時期の「加賀一向一揆」を題材に、加賀南部の独立自尊な地侍「風谷小十郎」、加賀の守護「富樫政親」、足利9代将軍「足利義尚」など、様々な視点で描かれていく作品の下巻です。 過去に読んだ、戦闘的な北方さんの作品(敵を置き、軍備、調練、戦闘の流れ)と違い「加賀の宗教勢力と、どう向き合うか?」が軸ですので、かなり後半にならないと、事態が動かず、少しじれったい感じがしました(苦笑) 北方さん、60年代に学生運動に参加経験有りだそうですが、これは暴動を抑える側の視点だなぁ…と感じながら、読んでおりました(笑)2025/05/17
Book Lover Mr.Garakuta
18
いやあ実に面白い作品ですね。余り歴史に明るく無いので、新しい事を知り感動の涙に浸る思いでした。そうなんやと思いつつも、当時生きてきた人たちが生き生きとえがかれていて実によかった。当時の人々も苦労人が多かったんだろうなと思いましたよ。因みに背景は、日本の戦国時代の北陸(加賀地方)の物語。2020/06/06
豆電球
15
戦国時代の始まりに、その後を予見するかのような加賀一国の争乱。まさに戦国時代の縮図とも取れます。加賀の守護、地侍、本願寺の僧たちに門徒、将軍家、加えて山の衆など独自の生計を立てる者たちに名もなき民。一部を除きほとんどの人間が己の欲の為に戦っているのではないという事。行き着くべきは平らかな世であると皆が思っている。ただそこへ辿り着く為に描く道のりが違うというだけ。こんな本を書いてしまう北方謙三は本当にすごい。日本が舞台の歴史小説はこれで書ききったと仰っているようですが、そう言わずまだまだ読みたいです先生!!2022/07/15