出版社内容情報
愛犬の死、湖上花火、大岡昇平夫妻との交流……。執筆、選考会、講演など、夫・泰淳の多忙な仕事の合間を縫うようにして過ごす富士山荘での日々を綴る。昭和四十一年十月から四十四年六月の日記を収録する。田村俊子賞受賞作。 〔全三巻〕
巻末エッセイ しまおまほ
内容説明
愛犬の死、湖上花火、大岡昇平夫妻や土地の人々との交流…。執筆に加え講演、選考会など多忙をきわめる夫・泰淳の仕事の合間を縫うように過ごした富士山荘の日々を綴る。昭和四十一年十月から四十四年六月の日記を収録。田村俊子賞受賞作。
目次
昭和四十一年(十月;十一月 ほか)
昭和四十二年(一月;三月 ほか)
昭和四十三年(一月;三月 ほか)
昭和四十四年(三月;四月 ほか)
著者等紹介
武田百合子[タケダユリコ]
1925(大正14)年、神奈川県横浜市生まれ。旧制高女卒業。51年、作家の武田泰淳と結婚。取材旅行の運転や口述筆記など、夫の仕事を助けた。77年、夫の没後に発表した『富士日記』により、田村俊子賞を、79年、『犬が星見た―ロシア旅行』で、読売文学賞を受賞。93(平成5)年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちゃちゃ
119
もう、病みつきになりそうだ。上巻に続いて中巻は、昭和41年10月から44年6月までの日記。山荘暮らしにも馴染んできたためか、庭の草木や小動物など、富士山麓の厳しくも美しい自然の描写が増える。けれど、そこには愛犬ポコの姿はない。わずか6歳で突然の死。山荘の庭の片隅に埋葬。周囲に響きわたるほどの号泣。しかし、感傷に溺れるような記述は見当たらない。自責の念を深く心に沈ませながら、「ポコ、早く土の中で腐っておしまい」。この感覚が魅力的なのだ。対象に寄りかからず、ある程度の距離を持って愛おしむ。その潔さが、いい。2022/06/30
Gotoran
36
武田泰淳の妻百合子が富士山麓の山荘生活を綴った日記、全上中下の中巻。昭和41年10月から昭和44年6月までを収録。富士山荘の生活に大分馴染んできてのびのびとした様子が垣間見られる。読み続けるに従って読み手もこの日記に馴染んでいく。愛犬の死、湖上花火、大岡昇平夫妻との交流等、執筆、選考会、講演など、夫・泰淳の多忙な仕事の合間を縫うようにして過ごす富士山荘での日々が記されている。2025/04/18
mayumi
30
この巻で愛犬ポコが死ぬ。わたしはてっきり病気て死んじゃうのかなと思ってたんだけど、飼い主の不注意による事故死であることが判明。東京から富士に帰る車のトランクに籠に入れたポコを入れていた。ポコは籠の蓋を頭で押し上げ首を出した。車が揺れるたびに、無理に押し上げられた蓋はポコの首を絞めつけ、引っ込めることが出来なかったポコは死んでしまった。昭和42年。犬の扱いがぞんざいだった時代とはいえ、何でトランク?せめて後部座席に置いてあげなよ!本人はちょっとしたペットロスになって泣いてたけど、愛犬家としては許せん。2021/05/14
スイ
19
何なのこの面白さは?! 上巻があまりに面白かったので、トーンダウンするかな…とも思っていたのだけど、とんでもない。 ページの中に引きずり込まれて、読後も私の一部は戻れずに夏の山をさまよっているような気がする。2023/11/06
更夜
10
電子書籍で買いなおして、電車の待ち時間や昼休みといった隙間時間に読み続けていた中巻が終わりました。もう『富士日記』は何度読んだかわかりませんし、何度読んでも新鮮な発見があります。昭和40年前後に車を運転する百合子さんの運転についての考え方が今となっては共感しきり。本当に運転しない人は勝手な事言うだけなんですよね。三食の献立も興味深く。毎朝同じの私と違って、毎朝違う献立ってすごいことです。百合子さんのユーモア精神というより観察眼の鋭さを感じたのは美しい少女を「紅衛兵の美少女みたい」と書いた所。確かに! 2023/11/05