出版社内容情報
空中爆発を起こし墜落した77便。その悲劇から逃れた5人には、奇妙な共通点があった……。舞台は飛行機から新幹線、豪華列車、フェリーまで。旅路の郷愁が殺意の引き金を引く!
鉄道をこよなく愛する著者による、トラベルミステリ傑作集。〈編者解説〉日下三蔵
夏樹 静子[ナツキシズコ]
著・文・その他
内容説明
旅客機が爆破され、乗客全員が死亡。五十一名のうち四人と、切符を買いながら乗らなかった者一人には奇妙な共通点があった(「77便に何が起きたか」)。電車では毒殺、フェリー内では密室殺人…楽しいはずの旅路が血に染まる!乗りものにロマンと魅力的な謎を見いだした著者による、トラベルミステリーの名作をセレクト。
著者等紹介
夏樹静子[ナツキシズコ]
1938(昭和13)年東京生まれ。慶応大学在学中に長編『すれ違った死』が江戸川乱歩賞候補に選ばれる。70年『天使が消えていく』が再び同賞の候補になり、単行本化され作家デビューを果たす。73年『蒸発』で日本推理作家協会賞、89年に仏訳『第三の女』でフランス犯罪小説大賞、2007年日本ミステリー文学大賞を受賞。2016年(平成28)没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
toku
9
久しぶりの夏樹静子さん。飛行機、列車、フェリーなど乗り物がテーマの短編集。安定の面白さ。今では無理な固定電話のトリック、昔、家の電話で試した事があるのを思い出した。 あとがきに「読者にクスっと笑ってもらいたい」みたいに書いておられたが、その作品の犯人の右往左往ぶりにはかなり笑えた。 2018/08/22
ヨコケイ
3
〈トラベルミステリー〉とあるが、解説通り旅情云々よりも、交通機関がモチーフの短篇集といった印象。表題作「77便…」は旅客機爆破事案の裏に潜む人の心理。ナホトカ航路のソ連船で女子学生が蒸発する謀略物風味の「ハバロフスク号…」。ブラックな笑いの時刻表付き倒叙物「特急夕月」。直球のアリバイ崩しに皮肉を利かせた「山陽新幹線…」。仏の列車内(ビュトール『心変わり』と同じ列車?)での殺人を安楽椅子探偵×○○○○○○で綴る「ローマ急行…」が一番好み。高知行きフェリー内での密室がスマートに解かれる「密室航路」も善哉。2023/03/09
hirorin
3
どこかの書評で「隠れたトラベルミステリーの傑作短編集」と紹介されていたので、市内だけどめちゃくちゃ遠い図書館に行って借りてきた。(なぜその図書館かは、深刻かつ面白い理由あり)書かれたのが、今から45年くらい前の作品ばかりなのでさすがに時代背景の違いがあってピンと来ないこともある。この「77便~」は、旅客機が爆破され51人の乗客全員が死亡。そのうちの4人と切符を買いながら乗らず死亡を免れた1人に奇妙な共通点が。それに不審を覚えた刑事たちが真相を追求していく。★2022/01/13
uchi
3
大好きな乗り物ミステリー。特急夕月には特に感動しました。2019/08/17
Aminadab
3
夏樹静子(1938~2016)初読み。編者日下三蔵氏の選択に納得。表題作はミステリの仕掛けとしても作者の代表短編なのだろうが、その上に作者の乗り物好き、現地取材好きが伝わってきて楽しい。1970年代の千葉県印旛沼周辺なんてこんな感じだったろう。「ハバロフスク号…」はサハリン引き揚げ者の切なさがいい。「特急夕月」、「山陽新幹線…」は時刻表ものだが、それぞれ最後にひねりがある。「密室航路」も東京・高知フェリーさんふらわあ号の乗船記のようで楽しい。短編傑作集が出たらまた読んでみたい。2018/07/21