出版社内容情報
無気力に生きるケータリング業者の水島健一。先輩の忠告も、派遣先で問われる不可解な薬の存在も軽く受け流してきたのだが、ある少年と出会い、それらと真面目にかかわらざるを得なくなる――。少年が最後に下した決断に、水島はどう向き合うのか! 傑作感動長篇。
内容説明
ケータリング業者の水島健一は何事にも無気力な四十四歳。病死に見せかけ楽に死ねる「薬」の都市伝説に翻弄される人々を横目に、手抜き調理で依頼をこなす日々だ。しかし、生意気な少年・英樹との出会いが健一の料理を変えていく。それと同時に「薬」の噂とも向き合うようになるが…。真摯に生きることを拒んできた大人と、生死をまっすぐに見つめる少年の交流が胸をうつ感動長篇。
著者等紹介
桂望実[カツラノゾミ]
1965年、東京都生まれ。大妻女子大学卒業。会社員、フリーライターを経て、2003年『死日記』で「作家への道!」優秀賞を受賞し、デビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふう
98
料理が登場する作品はけっこう読みましたが、メニューや味付け、材料へのこだわりがそれぞれ違うように、似ているけど同じじゃない作品ばかりでした。おいしい料理、ていねいに作った料理が誰かの心をほぐす…。この作品はそれだけじゃなくて、おいしいと言って食べてくれる一人の少年が、生きることに無関心な料理人に、生きる力を分け与えてくれます。二人のやりとりが軽妙で楽しく、そして、二人の抱えているものがあまりにも重く、そうなんだよなと胸を打たれました。亡くなった人がどこへ行くのかわからないけど、星になるとわたしも信じたい。2020/01/25
アッシュ姉
76
美味しそうな表紙につられて、桂さん二冊目。おじさんと少年の交流が微笑ましい切なくて温かいストーリー。面倒くさがりな主人公に親近感を覚えたが、視点や場面が頻繁に変わるので感情移入しきれなかったのが残念。もう少し落ち着いて読みたかった。次は『エデンの果ての家』を読んでみたい。2020/02/26
優希
59
無気力にしか行動しないのに、出会いによって真摯に生きることを受け入れることができるのですね。2021/04/22
TAKA
53
親にとって自分の子供として生まれてきてくれただけで、思っていたような子供にならなくても、それだけで充分なんだ。僕が登場するのが遅くない。前半が冗長しすぎて投げ出しそうやった。視点がコロコロ替わっていくのも焦点が曖昧で最期の感動が勿体ないなあ。2024/09/20
katsubek
39
余情という言葉がぴったり当てはまる作品。短いエピソードをいくつも積み重ね、その中で鍵になる部分が何度も繰り返して提示される。.....自分よりも若い人が亡くなる悲しみを一人一人が乗り越えようとして前を向く姿が好ましい。2018/12/18