内容説明
ナチス・ドイツ報道でピューリッツァー賞を受けたスター記者が、一九四一年二月七日、日本の地を踏んだ。『ニューヨーク・タイムズ』の特派員としてであり、太平洋には戦争の暗雲が広がり始めていた。取材した政治家の言動や印象、大使館員、特派員らとの交流に加え、本国に送った記事が引用・再現される。日米開戦前後の日本を伝える貴重な証言。
目次
新たな地平へ
嵐雲
神と八紘一宇
「天与」の機会
神経戦
譲歩する?
ある提案
新たな戦術
日本人の「仲裁」
くつろいで!
燻る火
抑制と均衡
天皇制社会主義
計略をめぐらす
外交攻勢
「和平条件」
不一致
オランダ人は打ち負かせない
「神風」
大いなる決断
動員!
馬を換える
「…戦争寸前!」
試金石―石油
臣民の道
現人神
「無比の国体」
著者等紹介
トリシャス,オットー・D.[トリシャス,オットーD.] [Tolischus,Otto D.]
1890年、ドイツ生まれ。1907年、アメリカに移民。ジャーナリスト。33年から、『ニューヨーク・タイムズ』ベルリン支局に勤務。ナチの台頭を報じるなど、現地からの記事が評価され、1940年、ピューリッツァー賞受賞。64年まで、『タイムズ』の編集委員を務める。67年没
鈴木廣之[スズキヒロユキ]
1952年生まれ。東京大学大学院修了。美術史科
洲之内啓子[スノウチケイコ]
1955年生まれ。東京大学文学部卒業。美術展紹介サイト主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
勝浩1958
15
開戦までの緊張感が伝わってきます。日本もアメリカも戦争をしたい人がいたということです。当たり前ですが、いつの世もマスコミの責任はかなり大きいと想います。昔は酷かったが、今はもっと酷いと池上彰氏に言われないことを祈ります。2017/11/25
ろびん
3
色々差っ引いても凄く面白いな。2019/11/20
ポルポ・ウィズ・バナナ
2
1941年、ドイツ移民のアメリカ人記者の日本滞在記。当時の日本は現在の北朝鮮に酷似。よくもまあこんな国を褒め称えるよな。 海外メディア「日本の指導者たちが革命よりも戦争を望む可能性があり。だがそれは国民のハラキリくらいにしかならないだろう」と懐疑的。しかし「軍部が中国人の手に掛かって負けを認めるのは無理だろうが、合衆国や大英帝国のような真の大国の手に掛かるのならば、軍部も面子を失わずに敗北を受け入れるだろう」とも。つまり欧米は、日本は中国との戦争で疲弊しまくっていることを“当然”認識していたわけだ。2017/11/08
古本虫がさまよう
1
上巻は1941年1月から始まり8月ごろで終わる。日本に向かう途中ハワイに立ち寄り、キンメルさんとワイキキでばったり。日米戦争が起こることには懐疑的だったそうな。「いずれにせよ、万全の備えがある」と。田中上奏文が何度か出てくる。ホンモノ扱いとして。編集部が注をつけているが、「タナカ・メモリアル。第二六代総理大臣田中義一が書いたとされる、中国侵略と世界征服を説く上奏文。田中上奏文」としかないのはちょっとおかしいのでは。せめて、最後に「偽書」とまで書かなくとも、 「偽書と見る向きが強い」とは書くべきだろう。2017/11/03
0
興味深い一冊だと言えよう。 ただ、著者が戦中の日本で苦痛を受けたということを勘案しても、前編後半の古事記の解説などに見られ日本への偏見に満ちた、近代日本は古代ギリシャ以下の思想だとか、日本語は抽象的な表現がないだとか、そういう記述が多く多少うんざりする。 外交関係の観察は興味深いが、日本が世界征服を企んでいるという考えが文中に頻繁に登場することが幾分気になってしまう。 全体的には当時の雰囲気が分かる本だと言える。2018/06/11