内容説明
英国でこの世を去った大伯母・玉青から、高級住宅街にある屋敷「十六夜荘」を遺された雄哉。思わぬ遺産に飛びつくが、大伯母は面識のない自分に、なぜこの屋敷を託したのか?遺産を受け取るため、親族の中で異端視されていた大伯母について調べるうちに、「十六夜荘」にこめられた大伯母の想いと、そして「遺産」の真の姿を知ることになり―。
著者等紹介
古内一絵[フルウチカズエ]
東京都生まれ。映画会社勤務を経て、中国語翻訳者に。第五回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、2011年『快晴フライング』(ポプラ社)でデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
エドワード
84
エリート会社員の雄哉が突然相続することになった古い洋館・十六夜荘。今は四人の若者のシェアハウスになっている、彼の大伯母・玉青の屋敷。資本主義の権化のような雄哉は夢追い人の彼らを追い出そうとするが、一瞬のミスで会社をクビになり、彼らと交流し始め…。雄哉の心の変化を追う現代編と、十六夜荘と玉青の関わりを描く昭和編が交互に進む。激動の時代を生き抜き、一度手離された十六夜荘を必死に取り戻す玉青。彼女が取り戻したのは建物と精神―自由な芸術家たちの魂だ。二重写しになる若者たちの姿が見事。無名の画家たちの作品展に感銘。2017/10/25
goro@80.7
83
記憶も定かでない大叔母から贈られた遺産は一等地に立つ寂れた元華族の御屋敷だったが住んでいるのは癖の強い人たちが住んでいる十六夜荘だった。譲られた雄哉と大叔母玉青の回想を交互に挟みながらジワジワト読ませる。理不尽なことばか戦時下の青春時代、玉青や夢を追った青年たちが鮮明に甦って来る。凛々しいバロネスが問いかけるものに気づかされる。満ちて欠けてを繰り返すことなど当たり前だと思えれば心の持ちようも変わる。芳醇な物語を読ませてもらいました。2021/09/25
itoko♪
72
エリート社員大崎に、ある日突然の伯母の訃報と共に、伯母の遺産話が。それは伯母の持つ十六夜荘という古いシェアハウスだった。現代と、戦中戦後、二つの時代の物語が紡がれる。十六夜に集う人々は、今もそして過去も、愛すべき身の程知らずだ。でも皆、自分の居場所を自分で作っている、堂々と。うまく言葉に表せない感情を、本作からはたくさん貰ったような気がする。『マカンマラン』のシャールさんのご先祖さまも居たような(笑)既読の『痛みの道標』とも少し繋がりがあるようなので、文庫化したら確かめてみたいと思う。2017/11/20
じょんじょん
69
マカン・マランの古内さん作品、事前知識なく読み始めました。書名から三浦しをんさんの『木暮荘物語』のようなシェアハウスエピソードストーリーかなと思っていたら、大違い太平洋戦争前後と現代をいききする壮大な人間史ストーリーでした。戦争前後と現代が並行して物語がすすむなか、どのように交わって帰着するのだろう、途中からぐんぐん惹きこまれました。現代に生きて、認識のなかった大叔母から十六夜荘の相続指名を受けた雄哉が、しだいに変わっていく様子が嬉しい。ラストのシーンは感動のフィナーレが鳴り響くような気持ちになりました。2018/02/13
達ちゃん
48
戦争の時代を生き抜いた人たちの物語に感動です。テーマは重いけど読み終わった後すがすがしい気持ちになれるすごくいい話でした。2020/01/27