内容説明
ユセンにしないと出てこない味なのよ―心にとまる言葉や思いを「湯煎」にかけ、日々を身体に染み込ませる。氷の中に眠る狩人、焼きいも屋さんの落とし物、パリに歩いてやってきたキリンの子ども…熱が通りきらなかった部分に目を凝らせば、流れゆく時の切実な一瞬があらわれる。心の奥の塊を、やわらかな火であたためるエッセイ集。
目次
牛乳は噛んで飲むものである
五千年後の健康飲料
火事と沈黙
最小の三分の一を排棄すること
煉瓦工場の退屈
運河について
束ねた柱
ペンキ屋さんには氣がつかなかつた
悪魔のトリル
落下物について〔ほか〕
著者等紹介
堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年、岐阜県生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 2件/全2件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
129
堀江さんの久しぶりの随筆です。幼稚園時代の思い出から最近までの海外旅行へでの出来事などが堀江さん特有のゆったりした筆致で楽しませてくれます。堀江さんの随筆でいつも感じるのは、省略が少ない割にはあまり細かく感じられないところがあります。何度も読み返したくなる感じです。2017/04/27
penguin-blue
45
堀江さんの文章が好き。身近で共感する、というよりは同じ世界を見ているはずなのに、どこか遠いところから違うレンズを通してみているような視点と硬質な文体に憧れる。個人的な色のイメージは乳白色と明るいグレー。その文体での堅い文芸の話もわからないなりに面白いのだけれど、海外から猫を連れ帰る飼い主の心配だったり、焼き芋屋さんの後を追いかける話だったりするとほのかな近しさを感じるとともにエッセイであっても知らない場所を舞台にした小説を読んでいるような気がするのだ。2017/10/26
竹園和明
40
遠い記憶や可笑しなこだわりを取り上げ、蘊蓄を交えながら語る堀江敏幸のエッセイです。タイトルのバンマリーとは湯煎の事だそうで、牛乳を湯煎し噛んで飲む事を薦めていた幼稚園時代の先生の思い出話から、「湯煎」という淡い行為に擬えて諸々のテーマを湯煎の如く柔らかに考察して行きます。誰しも他人からすると奇妙とも思えるこだわりを持っているものですが、氏も妙な処にこだわりを持っているなぁと可笑しくなってしまった。ひとつの話題をどんどん広げて行く展開がまた面白い。心落ち着けゆっくり読みたい一冊。本棚にずっと残しておこう。2018/02/09
Eee
37
ゆったりと読めるエッセイ 牛乳を湯煎すると味が異なる よりいっそうおいしくなる 少しの手間が少し時間をかけることが よりよいものを作り出す ほっこりしながら読みました2017/10/31
はやしま
33
いつものごとくちょっとしたきっかけから思わぬ方向へと連想をし、主に書に関して膨らませてくれるあれこれ、あるいは他で聞けないような体験談に浸る。堀江氏が身体内で湯煎(bain-marie)させ、聖女バン・マリーへあてた手紙のように紡いだエッセイ群。他の著作と大きな違いはないけどこのスタンスが肌に合ったのか本書は氏の著作の中でもとりわけ再読を繰り返しそうな予感。微温状態の、どこか不吉な塊を残した文章を牛乳を噛んで飲むように読み進めた。著者がこの先もバン・マリーへの手紙を書き続けていくのを追いかけていくだろう。2021/12/09
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