内容説明
若者がみな移住してしまった地球に異星人の襲撃が。最後に残った老人たちはいかにして侵略者に立ち向かったのか!?老人問題への温かい心情を示した表題作はじめ、「人口九千九百億」「懲戒の部屋」「色眼鏡の狂詩曲」など、著者の諷刺魂が見事に発揮されたSF九篇―“永遠の前衛”筒井康隆の原点にして不朽の初期傑作集。
著者等紹介
筒井康隆[ツツイヤスタカ]
1934(昭和9)年、大阪に生れる。同志社大学文学部で美学芸術学を専攻。60年、SF同人誌「NULL」を主宰、本格的創作活動に入る。81年『虚人たち』で泉鏡花文学賞、87年『夢の木坂分岐点』で谷崎潤一郎賞、89年「ヨッパ谷への降下」で川端康成文学賞、92年『朝のガスパール』で日本SF大賞、99年『わたしのグランパ』で読売文学賞を受賞。2002年、紫綬褒章を受章。10年、菊池寛賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
84
初期の作品集。久しぶりの筒井ワールドを堪能した。読んでみて書かれていることがいま問題になっていることや話題になっていることに驚いた。「アルファルファ作戦」では高齢化やネット社会を予知したかのように皮肉っているし、「人口九千九百億」では世界的な人口増加や住宅問題を「一万二千粒の錠剤」は長寿を求める風潮をといった具合。また今話題の人工知能(AI)にも触れている作品もあった。SFというと50年くらい前は子供の読み物のような社会だったと思う。それを一般の読み物に変えた氏の功績は大きいと感じた。図書館本2017/08/22
メタボン
34
☆☆☆☆ かなり初期の短篇集。今でも色あせぬSFの傑作短編が多い。大型化した蜂を乗り物にして地球を占領しようとするクモ型宇宙人へアルファルファの花で対抗する表題作。いつの時代のどこに出てくるのかわからない「近所迷惑」予備校生と大学生の紛争「慶安大変記」人口大爆発によりとんでもない環境となった地球を描く「人口九千九百億」NHKへの痛烈なパロディ「公共伏魔殿」一粒で1年寿命が延びる薬をもらった俺がすべての人から狙われる「一万二千粒の錠剤」痴漢の冤罪でとんでもない目に会う「懲戒の部屋」。他、旅、色眼鏡の狂詩曲。2023/04/06
おすし
21
昭和コントちっくなイキオイの絵面や言葉選びの妙で突進してくる筒井康隆さにゲラゲラ笑った短編9話。他の作家がこういうのをやると筒井康隆っぽいね!って言われるだけだもんねそれぐらい筒井康隆は筒井康隆であるなぁ。ツマンナイ感想書いて水を差してもしょうもないので好きなフレーズを残しとこう。『近所迷惑』おれはパンティを一枚ぶらさげたまま、砂漠のまん中に茫然と立ちすくんだ。『色眼鏡の狂詩曲』「日本までとどくミサイルないあるか。あるあるか」「あるある」2023/06/10
サーフ
17
筒井康隆の初期の頃の作品集。1960年代に書かれた作品ばかりなんだけれど、作品で書かれている事が今の時代の方が当てはまっているという所が筒井康隆の凄い所。例えばNHKの増長を描いた「公共伏魔殿」、高齢化社会、老老介護とも受け止められる「アルファルファ作戦」、間違った日本観を描く「色眼鏡の狂詩曲」など。本当に40,50年前に書かれた作品なのか?と思ってしまうほど今の日本と当てはまってしまう。一番好きなのは「懲戒の部屋」。不条理ホラーでありながら現実感も併せ持つお話。メチャクチャ怖いです。2018/02/25
mokona
14
子供の頃『七瀬シリーズ』が好きで読んでいた。それ以来なのでウン十年ぶりの筒井康隆になる。七瀬シリーズしか読んだことのない身としては、筒井康隆ってこんな感じの作品を書く人だったのか!と驚かされた。初期の頃の短編集ということだったが、いま読んでも、そこまで古さは感じない。諷刺がきいていて面白いのだが、私程度の読書力では、用語の難解さとハチャメチャさについていけなかった(笑)「慶安大変記」「一万二千粒の錠剤」は私でも解り易くて好きだった。逆に「旅」「色眼鏡の狂詩曲」はチト苦手かな。2018/01/09