内容説明
ある朝、伽耶は匡にこう告げる。「あなた、恋人がいるでしょう」―結婚十五年、セックスレス。妻と夫の思惑はどうしようもなくすれ違って…。愛しているなら、できるはず?女がいて、男がいて、心ならずも織りなしていく、やるせない大人のコメディ。
著者等紹介
井上荒野[イノウエアレノ]
1961年東京生まれ。成蹊大学文学部卒。89年「わたしのヌレエフ」で第一回フェミナ賞受賞。2004年『潤一』で第一一回島清恋愛文学賞、08年『切羽へ』で第一三九回直木賞、11年『そこへ行くな』で第六回中央公論文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さてさて
165
「それを愛とまちがえるから」という書名の『それ』が気になるこの作品。『いつから、セックスが夫婦の義務になりかわり、することにもしないことにも言い訳が必要になったのだろう?』というその先にまさかのW不倫が展開する様を見るこの作品。一見修羅場が展開すると見えたその先にはコミカルに振った井上さんが描く、深刻な内容を軽やかな筆致の中に見せていく興味深い物語が存在しました。読後にその書名の絶妙さに、なるほどねと、妙に納得感を感じるこの作品。その文体含め、軽快にスイスイ読めてしまう物語にすっかり魅了された作品でした。2022/04/20
じいじ
111
或る日の朝「あなた、恋人いるでしょう」とドキッとする妻のひと言から幕が上がります。(不肖私なら泰然自若と少しも揺るがずですがw)主人公の夫は、目はうつろ茫然自失の体です。この夫婦どっちもどっちですが、セックスレスを除けば仲睦まじい素敵な中年夫婦。W不倫が露見した後は、二人の嫉妬心も垣間見えて愉快で面白い物語です。不倫の恋を、こんなにも明るくコミカルに描く井上荒野もいいですね。大人の火遊びコメディ劇は面白かった。夫婦とは…?、について、愉しく勉強させていただきました。2017/08/04
まさきち
71
お互い不満を持ちながら素直に相手に伝えられない匡と伽耶、そしてその不満を晴らすかのようにお互いが恋人を作り体の不満を晴らしていたがひょんなことから夫婦とそれぞれの恋人4人でキャンプに行くことに。そしてそれぞれの存在の大切さに気付いて再生していく、そんな感じなんですが一番気になったのはやっぱり夫婦がそれぞれそんな風に思っていたのかと気づかされたことですかね。2016/04/04
M
63
倦怠期の夫婦。それぞれに恋人がいることを告白。それぞれの相手にも事情を説明。そうお互いに承知の上で妻は外泊宣言。夫は自宅に彼女を連れ込む。妻が帰宅して鉢合わせ。そのまま3人で飲み会。ダブルデートで4人でキャンプへ・・・この辺りで、いい加減ひとりくらい異論を唱えろー‼ってなりました(笑)。流れゆくまま。流れ着くまま。軽薄な、ある意味贅沢な大人の恋愛ごっことも取れる。・・・誤って好みじゃない入浴剤を入れてしまったぬるま湯に浸かって徒労感を覚えるような読後感。2016/05/13
ワニニ
61
わかる。そんな夫婦、たぶんよくいる。夫の言動も妻の思いも、はたまた相手の若い女や漫画家の男の気持ちさえ、うーんと唸るほど絶妙。身につまされちゃったりもする。伽耶の行動はちょっと突飛にも見え、まぁ、そんなふうにデフォルメして描いているのかもしれないけれど、やるかもしれない感が面白いし、怖いもの見たさも手伝って盛り上がる。でも、いろいろ暴れて(静かに)みても、結局、夫婦(家庭?)に落ち着くのね。香山リカの解説も併せて、苦笑しつつ、あっという間に読了。せめて物語くらい、もうちょっと夢見たいから、次行こう!2016/09/09