内容説明
ノルマン人征服以前から、チャールズ一世の処刑(清教徒革命)まで。美徳と悪徳、利己心と虚栄心、愚行と蛮行…、史劇さながらに展開する歴代国王の事績を、公正な眼差しで叙述した、シェイクスピア翻訳者・福田恆存が書きたかった英国史。ジョン・バートン編「空しき王冠」(福田逸・訳)を併録。
目次
私の英国史(アングル人の国;ノルマン朝;プランタジネット朝;英国史の基調音;百年戦争;薔薇戦争;テューダー朝;英国の球根・エリザベス一世;ステュアート朝)
空しき王冠(ジョン・バートン)
著者等紹介
福田恆存[フクダツネアリ]
大正元年(1912)、東京に生まれる。東京帝国大学文学部英文学科を卒業。戯曲『龍を撫でた男』で第四回読売文学賞戯曲賞、「『シェイクスピア全集』の訳業」で第二回岸田演劇賞、第十九回読売文学賞研究・翻訳賞、「『ハムレット』の翻訳・演出」で芸術選奨文部大臣賞、『私の國語教室』その他で第十二回読売文学賞評論・伝記賞を受賞。平成6年(1994)没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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南北
50
清教徒革命までの英国史について国王を中心に記述したものだが、日本人から見た英国史を記述しているといえるもので、名著と言えるだろう。シェークスピアの史劇を読む前に参考になるかと思って読んでみたが、国権とローマ教皇を中心とした宗教権力との葛藤や国王と封建貴族との葛藤などを通じてさまざまな妥協を繰り返しながら英国が形成されてきたことを明らかにしている。マグナ・カルタを「出たらめで矛盾に満ちた雑文集」であり、「国王、貴族、教会、市民、それぞれの利己心のごった煮」とする点などは特に興味深かった。2024/09/02
Yoko
8
清教徒革命までの英国史の流れがとても分かりやすく書かれていて読みやすかったです。内容も、後世に理想化等されたものではなく、歴史の流れや時代背景、人間の性質等も考慮して公正な目で見て語られてるところがとてもよかったです。「統治される技術」あるいは「統治させる技術」、民主主義の起源が、それぞれの立場の人間の利己心の折り合いとして編み出されたということが、なるほどねって思いました。この本には他にジョン・バートンの『空しき王冠』が収録されています。この本を紹介して下さった方に感謝です!2015/09/18
itosan04
7
薔薇戦争についてwikipediaで読んでたら、「ゲームオブスローンズ」の原作A Song of Ice and Fireとの関連性が書いてあった。それで福田氏の本書でこの薔薇戦争の戦国絵巻、複雑怪奇さを読んで少しは理解できるかと思ったら全然駄目だった。(w「ゲームオブスローンズ」を一気観でもしようかな。あと何といってもクイーンエリザベスの英雄的迫力。ケイト・ブランシェット以上に迫力ある女性だったことは間違いない。本書巻末の「空しき王冠」も複雑すぎて面白い。2016/02/09
Ohe Hiroyuki
6
一言で言えば「名著」である。▼私は、著者が英文学科卒であることを正直知らなかった。一読して、本書の内容の濃さに大変驚き、また多分に惹かれるものがある。▼本書は、バートンの「空しき王冠」という戯曲めいたものを称えつつ、英国史を多少でも知らなければわからないだろうという著者の老婆心から誕生した。▼いわば映画のパンフレットのようなものであろう。しかし、その内容の濃さと文体には目を見張るものがある。歴史学ではない、文学として歴史を見るとはこういうことかと思わされる一冊である。2024/06/07
xuxu
5
マグナ・カルタは「紙屑にも等しい雑文集」⁉にもかかわらず民主主義の出発点とされるのは、実は「英国人の節度ある狡知、或は叡智」であるという。この狡知の根底をなすのは英国人民の「統治される技術」。彼らは無能な王には反発する一方で、自分たちを護ってくれる強力な王の出現を待望していた。中央集権の強化と民主主義との対立融合、そしてフランス、ローマ、ケルトとの複雑な絡み合い。これこそが「英国史を貫く基調音」だと著者はいう。この基調音に歴代の王は振り回された。バートン編「空しき王冠」はそんな王たちの素顔を描いて面白い。2017/05/03