内容説明
インドで消息を絶った兄が残した「智慧の書」。不思議な力を放つその書に導かれ、隆は自らもインドへと旅立った…。ウパニシャッドからショーペンハウアー、そして現代へ。ムガル帝国の皇子や革命期フランスの学者が時空を超えて結実させた哲学の神髄に迫る、壮大な物語。『不滅の書』を改題。
著者等紹介
萩耿介[ハギコウスケ]
1962年東京生まれ。早稲田大学第一文学部ドイツ文学科卒。2008年『松林図屏風』で第二回日経小説大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
127
この作者の作品は以前に長谷川等伯を描いた作品を読んだことがありました。この作品では宗教的あるいは哲学的な要素がたたりかなり読む人によっては好き嫌いが分かれる気がしました。主人公がインドで消息を絶った兄の足跡を追っていく話と「智慧の書」というショーペンハウエルをめぐってのフランスあるいはそれ以外の時代のはなしへと物語は飛んでいきます。共用的な面がかなり多いとは思いますが私は楽しめてここにあるショーペンハウエルの著作を読んでから再読したい気になりました。2020/01/02
ケンイチミズバ
110
あまり興味が持てない地域と歴史の世界でなかなかページが進みませんでした。哲学や真理は時間を超えて普遍のものですが記された言語や遺されたものが正しく紐解かれなくては後世に受け継がれて行きません。ただし人間は哲学だけでは生きていかれませんし記録されるような壮大な?歴史を作ってきたのは権力の座にある者やその息がかかった者がほとんど。私達は歴史の中で、戦なら直ぐに死ぬその他大勢、足軽、農民、今ならサラリーマンなどザコキャラ。ですが歴史を動かすのは大衆という数の力に他ならない2017/05/08
マエダ
89
短編かなと思いきやちゃんと繋がっていた。宗教や哲学を考えさせられる一冊。2017/07/14
ちょき
74
ヒンドゥーの聖典「知慧の書」が書かれた時から、知を求める人々によって受け継がれ、連鎖していく様子をその時々の輝きを持った人達がいかに伝えていったかという物語。ムガル帝国の皇子ダーラー・シコーによる王位継承に纏わる内戦や、フランス革命の渦中で生きるデュペロンの時代に翻弄される様子が克明に描かれており、私の哲学力も1レベル上昇。ただの歴史書にとどまらず、時にマジックレアリズムも交えつつ親子や兄弟の愛憎劇までと色々てんこ盛りでお腹一杯。象隊の戦争など印象的なシーンも良かった。読了後の良い余韻が続くんだな~。2016/09/12
キャプテン
70
★★★☆☆_【象さんの表紙がパワフルだったので、よくあらすじを読まずに買ったことをここに告白します】インドで失踪した兄の残した「智慧の書」の正体と兄の失踪の真相を知るためインドへ迎う男の話。ムガル朝時代のインド、革命時代のフランス、そして現代へ紡がれる哲学書を巡る重厚な内容だった。読みやすいが、端々の宗教性が高く、よく理解できなかったので★3。こういう本を理解しちゃう俺って、もしかしてイケメソ…?などと淡い期待を寄せて読み進めたけど、しょせん僕は象さんに惹かれて本を買う男だということを思い知らされました。2016/10/12