内容説明
「倚りかからず」に生きた、詩人・茨木のり子。日常的な言葉を使いながら、烈しさを内包する詩はどのように生まれたのか。親族や詩の仲間など、茨木を身近に知る人物を訪ね、その足跡を辿る。幼い日の母との別れ、戦時中の青春時代、結婚生活と夫の死、ひとりで迎えた最期まで―七十九年の生涯を静かに描く。
目次
倚りかからず
花の名
母の家
根府川の海
汲む
櫂
Y
六月
一億二心
歳月
ハングルへの旅
品格
行方不明の時間
著者等紹介
後藤正治[ゴトウマサハル]
1946年京都市生まれ。ノンフィクション作家。『遠いリング』(岩波現代文庫)で講談社ノンフィ沓 ヨン賞、『リターンマッチ』(文春文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『清冽―詩人茨木のり子の肖像』で桑原武夫学芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
88
「ーY.Yに-」に書かれたように”墜ちてゆく”ことを自らに決して許すことなく、凜として立ち、清冽に生きようとした茨木さんを知ることとなった。そして茨木さんの品性に強く惹かれた。「自分の感受性くらい」「倚りかからず」を折にふれて読み返していこう。そんな気分である。ただ「四海波静」だけはいただけない。茨木さんが偏狭なイデオロギーをお持ちだったとは思わないが、怒りにまかせて「文学研究果さねばあばばばばとも言えない」などと表現なさったのは残念なこと。茨木さんならば、もっといろいろな事情に思いを致せただろうに。2017/08/12
おさむ
24
「精神の背骨がピンと伸びている」と天声人語で称された茨木さんの評伝。自分の感受性ぐらい等の作品を読み、向田邦子さんに似た強さを感じていたので、同じ戦中派(向田さんよりは4才上)と分かり、ストンと頭に落ちました。強い人ではなく「品格のある人」だったという著者の評価に納得。個人的には今年のベスト10にはいる傑作です。桑原武夫学芸賞受賞作。2015/05/06
たらお
21
NHK理想的本箱で詩人茨木のり子の紹介があり「自分の感受性くらい 自分で守れ ばか者よ」を知る。今まで詩に興味をもつことはなかったが、茨木によって書かれた自分を律する詩はレトリックがどうのではなく、言葉も分かりやすく心に訴えかけるものだった。20歳の頃に敗戦を経験している世代の言葉だが、自分を厳しく見つめた言葉は、その時の思いつきで書かれたものではなく、繰り返し吟味し、思いが結晶化されているようにも思える。詩そのものだけではなく、生き方、時代背景を知ることで詩に対して興味をもつことができた。2022/12/03
ジョニジョニ
17
いまのところ、読んだうち好きな詩は「倚りかからず」だけ、かもしれません。学のない僕にとって、その詩の背景までわからないし、わかろうとする努力もしない。そんな僕でもやたらと心に残るのは、いつも真面目な話をしているのに、急にとんでもない冗談を言うようなひとだったんじゃないかな、と興味をもって、評伝まで読んでみました。2023/04/02
KEI
15
茨木さんの詩が好きで、本書の文庫化を待っていた。茨木さんとは?作品を理解する上で良い指標となる評伝であった。ゆっくり、噛み締める様に読んだが、詩を読むたびに本書を紐解く様になると思う。強い人とは思わない、ただ自身を律する事においては強靭であり、それが詩作するいうえエネルギーの源でもあったろう。との一節深く頷いた。良い本であった。2015/06/12