内容説明
冷害や経済混乱で内憂外患が強まる中、天皇大権の発動によるクーデターを掲げた『日本改造法案大綱』が、磯部浅一、村中孝次ら、皇軍教育で純粋培養された青年将校たちの間に浸透していく。日々誦経に没入しつつ、怪文書で政府を翻弄するカリスマ。彼に慕い寄る若い軍人たちが、君側の奸を襲撃し、天皇からの応答を求めた蹶起の日がやってくる。
目次
第1章 西田税とともに(西田税=青年将校の登場;西田、「美しい死」を求めて ほか)
第2章 カリスマ的権力(怪事件とは何か;宮内省怪文書事件 ほか)
第3章 『霊告日記』(昭和政治史の裏面で―中野正剛という友人;田中義一内閣の打倒―小川平吉との交流 ほか)
第4章 日本ファシズム=革命への道(満州事変と北;国家意思の体現者として ほか)
第5章 二・二六事件まで(末松太平、磯部浅一、村中孝次;『改造法案』をめぐる対立 ほか)
著者等紹介
松本健一[マツモトケンイチ]
1946年(昭和21)群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。法政大学大学院在学中に『若き北一輝』(現代評論社)を発表。以後、日本の思想・政治・文学についての評論活動を展開。現在、麗澤大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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悠
1
北一輝といえば、二・二六事件の理論的な支柱であり黒幕という認識しかなかったけれど、この評伝を通して、自由民権運動に遅れてきた青年として産声をあげた思想家が、どのような理路をたどって、そこに至りついたのか、初めて知ることができた。『日本改造法案大綱』で戦後日本の青写真を描きえている先見の明もさることながら、国際情勢の的確な分析のもとに、昭和初期の段階ですでに、日本を破滅させる日米の衝突を避けるために、驚くべき二つの政策提言をしていることに、何よりも衝撃を受けた。二・二六事件に処する最終巻が楽しみでならない。2014/11/11
ishii.mg
0
ここまで読んでも結局のところ北一輝とはなにものか。わからん。熱に浮かされていた時代の生み出したものなのか。とくに松本が世に出したかのような「霊告日記」の詳細な読みは、必要か?解説するような代物ではない。2023/09/16