内容説明
明治憲法制定・帝国議会開設と近代国家へのスタートを切った日本は、内には藩閥と民党の抗争、外には日清・日露の両戦争と、多くの試練を迎える。帝国主義国家としての相貌をあらわにしはじめた日本、そして危機を乗り切った明治天皇の指導力とは。
目次
プロローグ 世紀の意識
1 世紀末の明治・新世紀の明治
2 国会前夜
3 初期議会と大津事件
4 世紀末の国会対策
5 日清戦争と三国干渉
6 藩閥と政党の提携
7 日露戦争と国家の完成
著者等紹介
御厨貴[ミクリヤタカシ]
1951年(昭和26)東京都生まれ。東京大学法学部卒業。東京都立大学教授、政策研究大学院大学教授、東京大学教授を経て、東京大学名誉教授、放送大学教授。政治家・官僚・実業家への聞きとり調査を蓄積して政策研究に資するオーラルヒストリーを提唱、精力的な活動を展開している。著書に『明治国家形成と地方経営』(東京市政調査会藤田賞)、『首都計画の政治』、『政策の総合と権力』(サントリー学芸賞)、『東京』、『馬場恒吾の面目』(吉野作造賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ふぁきべ
8
明治国家の完成というタイトルからもわかる通り、明治憲法の発布以降の国家の制度的な部分に焦点が当たっており、通史的な流れを理解したいのであればあまり向いていない。この時代の大事件ともいえる日清・日露戦争への言及はかなり限定的で、当時の世相や政治的な制度の移り変わりにほぼ注力された内容になっている。特に議会の成立と政党政治には紙幅を割いており、議会と超然主義政府の対立が天皇の介入を必要としたことや、政党政治の必要性を感じた伊藤博文の政党設立の経緯などは恥ずかしながらあまり知らなかったため、勉強になった。2023/09/26
Hiroshi
6
大日本帝国憲法の発布から日露戦争までの本。明治18年(1885年)に太政大臣独任制の太政官制度から国務大臣全員の合議制を特長とする内閣制度への転換がある。総理大臣は、①伊藤博文(長州)、②黒田清隆(薩摩)、③三条実美(公家)、④山県有朋(長州)、⑤松方正義(薩摩)、⑥伊藤、⑦松方、⑧伊藤、⑨大隈重信(肥前)、⑩山県、⑪伊藤、⑫桂太郎(長州)と続く。藩閥政治のバランスが見て取れる。この時代を伊藤博文・星亨・田口卯吉・尾崎三良・近衛篤麿を通して見ていく。議院内閣制ではない藩閥政府は、如何に議会を操縦するのか。2025/03/30
バルジ
6
議会開設から日露戦後までの15年間という世紀転換期を挟んだ時代の通史。時系列を淡々と記述するのではなく当時の世相や時間感覚を織り込むことにより、維新から数十年が経過した近代国家としての日本の姿を描き出す。個人的には執筆当時の世相を念頭に置いていたであろう政治模様の描写が素晴らしい。明治憲法体制という作ってみたはいいが誰も経験したことのない統治ゲームを主催する藩閥政府、対して新たなゲーム参加者として国家統治の一翼を担うこととなった政党との緊張感を孕みつつどこか牧歌的なのが面白い。2020/05/01
虎っち
5
当時の文学や日記を交えているため世相がよくわかる。明治憲法の不完全性がよく理解できるが、その不完全性をいかに補うかを当時の指導者が工夫している様子が描かれる。陸軍・海軍大臣の選任が政治とは別の制度となっていることは、内閣の脆弱性に繋がっている。2016/12/29
kazutoshi
3
本巻は明治憲法体制の元で、どのように国家を運営されていったか様々な視点から描いている。憲法による統治がなかなかうまくいかず苦労する元勲達。それを支える明治天皇。制度を整え日清、日露を勝ち抜き欧米各国と肩を並べるまで日本を導いた、偉人達の苦労は並大抵の事ではない。本書はそれを学ぶ上で欠かせない本である。2013/05/29