内容説明
何十年もかけてこの迷路の出口を探さなければならない―核兵器と原子力発電、オゾン層破壊、エイズ、沙漠化、人口爆発、南北問題…多岐にわたり、互いに関連し合う人類の「失策」の行く末は。著者の真骨頂というべき多分に予見的な思索エッセイ復刊。
目次
序―あるいは、この時代の色調
核と暮らす日々
核と暮らす日々(続き)
ゴースト・ダンス
恐龍たちの黄昏
レトロウイルスとの交際
人のいない世界
洪水の後の風景
著者等紹介
池澤夏樹[イケザワナツキ]
1945年、北海道帯広市生まれ。旅と移住の多い作家である。『スティル・ライフ』で中央公論新人賞と芥川賞、『マシアス・ギリの失脚』で谷崎潤一郎賞、『すばらしい新世界』で芸術選奨文部科学大臣賞、ほか受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mocha
73
数ヶ月かけて読了。核、環境破壊、天災、生物としての行き止まりなど人類の終末を様々な角度から考察する。初出は90年「文學界」の連載。当初の『楽しい終末』の試みは書き進める毎に負のカードばかりが積もり、楽しくないものとなっていった。単行本化、文庫化と時を重ねるうちに人類の負債はさらに増え、この新版は2012年刊。あとがきには福島原発にも触れる。今またコロナという更なる脅威がこの本の1章を書き加えた。2021/10/07
アナクマ
37
5章レトロウイルス。91年頃のHIVを俎上に。コロナ禍で再読。◉レトロウイルスの仕組み。都市化と人の移動規模・スピード、個人の選択権に触れる 。◉後半は、病気と社会の関係性。個人にとって物語は慰めにもなるが、社会の物語は個人を攻撃もする。排除と差別を超える叡知をと主張。◉著者の真骨頂は、情報の接合/気の利いた変奏をし、弱い個人の側から発信すること。事実を並べるだけではこぼれ落ちるものが多すぎるし、感情垂れ流しでは冷静な話はできない。本書は両者に架橋する。メッセージは皮膚から深部へと染み込むように伝わる。→2020/03/03
アナクマ
34
人類の様々な終わり方を考える科学的で文学的な書。終章_「来ないことを祈りつつ来る日を待つという特殊な姿勢以外にない」。待つ、というのは不思議な行為だ。精神のありようを内観させもする言葉。◉この思索の旅は、サハリンの川岸でのエピソードで締めくくり。流れに引っかかった樹木を取り除く老人の姿。「集団の中の善意のひとりでいたい。この問題に対して、それ以上いったい何が言えるだろうか」終。◉悲観論のまま終わるのですが、「それほど悪くないという結論を目指しての遥かな旅の第一歩」という位置づけ。未来は未確定なのだから。2022/01/14
アナクマ
26
(文春文庫版 p.210)集団への帰属が軽視されて個人としての生きかたばかりが優遇され奨励される時代に、自分の人生の長さを超える計画を立案し、実行し、次の世代へ受け継がせるのはむずかしい。2021/04/08
アナクマ
25
8章_社会主義と資本主義。「一つの実験が終わった。結論が出た」左右の混み入った話を「徹底的に簡素」にすると「社会主義は人間が潜在的に持っている能力をうまく引き出せなかった」。充分な生産と機能的な流通が成されなかったのは「怠惰の故ではなく、そういう制度のもとでは人は働かないものだからと考える他なくなる」。後半、カンボジアについての考察はこちらの知識不足。◉「人間たちは…貪欲な資本主義と脆弱な社会主義を適当な比率で混ぜて生きてゆこうとしている」。消費・労働・生活/地域。最適解を求めるうちに歳をくった。2024/04/12
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