内容説明
モノクロームの日常から、あやしく甘い翔溺の森へ。恋多き詩人に三十年以上仕えてきた女、孤独なカーテン職人が依頼をうけた屋敷の不気味なパーティー、魅入られた者たちがケモノになる瞬間…短篇の名手が誘う六つの幻想譚。
著者等紹介
小池昌代[コイケマサヨ]
1959年東京都生まれ。津田塾大学国際関係学科卒。97年詩集『永遠に来ないバス』で現代詩花椿賞、2000年詩集『もっとも官能的な部屋』で高見順賞、08年詩集『ババ、バサラ、サラバ』で小野十三郎賞、10年詩集『コルカタ』で萩原朔太郎賞を受賞。また01年に初のエッセイ集『屋上への誘惑』で講談社エッセイ賞、07年には短篇「タタド」で川端康成文学賞を受賞した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あんこ
29
『ことば汁』、暗い場所に迷い込んでしまったかのような印象を受ける短編集。女の醜くて生々しい部分を描いた物語でした。ぞわっとします。どれが夢なのか。気づけばおいでと手招きされた暗い森から出られなくなりそうな危うげな雰囲気を漂わせています。読むタイミングによっては、少し吐き気を覚えるくらい。怖いもの見たさで引き込まれていきます。2013/08/31
アキ・ラメーテ@家捨亭半為飯
26
ことば汁、だくだく溢れています。ザリガニ、鹿、雀、野うさぎ、蛇、幻想的な動物モチーフの作品が多い。「つの」と「すずめ」は一部リンクしている。日常から、いつの間にか幻想(異界)へ。「つの」の老詩人と秘書の関係が、いつの間にか、詩人の書いた詩の世界と重なりあう場面が好き。後、「女房」の「ああ!女房」というラストの一節。2015/06/03
かんやん
25
短編集。それぞれ幻想小説というか、日常が悪夢のような、あるいは条理を欠いた世界へと移行してゆく。詩人の言葉に期待しすぎたのか、少々薄味だと感じた。おどろおどろしいモノや狂気を望んでいるわけではない。ただ非現実はもっと書き込まないと。読めば読むほど現実→幻想→曖昧模糊とした結末への移行をニュートラルに感じてしまって残念だったけれど、『花火』はとても良かった。中年女の妄想にちょっとだけシンクロしてしまった(笑)2024/08/11
たま
24
普通の日常からいつの間にか別世界へと迷いこんでしまう短編集。妖しくて生々しくて、静かに怖い、大人の童話のようでした。嫉妬や欲望が人をけものにする過程が、爆発的ではなくじわりじわりとしていて、気がつけば後には戻れない場所まで辿り着いてしまっている状態がすごく怖かったです。それと同時に、老いてもなお女は女であることもよーく分かりました…しんどいような嬉しいような、でもしんどい。2014/03/30
かふ
16
幻想ファンタジー短編ということだが趣が作品によって随分違う。「花火」は花火大会に行ったときを思い出してしまう。花火が死者の供養というか思い出の供養なんだよな。もう遠花火の音しか聞けない。「リボン」はホラー気味のファンタジー。色々書ける人だと思うが返ってそれが移り気なような感じがしてくる。もう一つどっしりとしたテーマが必要かと。2025/06/28