内容説明
クリスマスイヴを控え、ペンション「春風」に集った七人の客。そんな折、オーナー・晶子のもとに、二十一年前に起きた医者一家虐殺事件の復讐予告が届く。刻々と迫る殺人者の足音を前に、常連客の知られざる一面があらわになっていき…。復讐を心に秘めているのは誰か。葬ったはずの悪夢から、晶子は家族を守ることができるのか。
著者等紹介
今邑彩[イマムラアヤ]
1955年(昭和30)年、長野県生まれ。都留文科大学英文科卒。会社勤務を経て、フリーに。1989年(平成元)鮎川哲也賞の前身である「鮎川哲也と十三の謎」に応募し“十三番目の椅子”を『卍の殺人』で受賞。以降、推理小説を中心にホラーなどを手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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夢追人009
328
今邑彩さんの通算10作目となるサスペンスミステリー小説です。ヒロインの晶子は二十一年前に起きた医者一家惨殺事件の三人組犯人の一人だが世間には隠して軽井沢でペンション「春風」を経営している。晶子は犯人の一人、洋一と結婚していたのだが肺癌で死別し、今は郁夫と再婚し店を続けている。数年前に殺人事件は時効を迎えたが、実際に大量殺人を犯した犯人・薫が何者かに殺され、唯一人の生き残りの晶子の元に復讐の予告状が届いたのだ。クリスマスイブに集まった七人の客の中に犯人はいるのか?晶子は若い娘と夫に過去を隠し敵に立ち向かう。2023/07/20
nobby
182
もう間違いなくタイトル『七人の中にいる』のままに疑心暗鬼を味わえる良作。冒頭衝撃な惨殺シーンから、場面は21年後に復讐予告を受けたペンションへと切り替わる。年齢に職業に境遇にと怪しい人物達に、次から次へと分かりやすく移り変わる嫌疑に翻弄されるのが楽しくてたまらない!どうしても主役が過去の悪事に関わっているだけに肩入れしにくいのはあるが、そこはあとがきで作家自ら述べている通り本格推理ではなくてサスペンスと割り切って(笑)やっぱりね…の犯人や突如明かされる事実に苦笑するのもご愛嬌。本当に今邑さんにハズレ無し!2021/04/19
🐾Yoko Omoto🐾
177
21年前のクリスマスイヴに起こった強盗と一家惨殺の悲劇。その事件に犯人側の人間として関わっていた晶子が、見えざる復讐者に追い詰められるサスペンスミステリ。復讐者の正体は結構早い段階で検討がついてしまい全体にオーソドックスな構成ではあったが、疑心暗鬼にとらわれた晶子が周囲の人間に次々疑いの目を向けていく展開はかなりスリリングで面白かった。だが倫理的な観点から考えた時、いくら直接人を殺めてはいないと言え罪も償わず己の幸せだけを守ろうとする晶子の姿勢が相当身勝手に思え、晶子に対する娘の台詞にも違和感が残る。2015/06/04
ま~くん
110
21年前に発生した医師家族殺人事件。時効はとっくに過ぎていたが、犯人一味の一人晶子に復讐予告の手紙と仲間の惨殺写真が届く。晶子は順調なペンション経営、更に良き伴侶、新しい家族も出来幸せの絶頂にいた。そこへ7人の常連客達がクリスマスをペンションで迎えようとやって来る。愛犬の不審死、協力者の不可解な事故。次第に晶子に伸びてくる魔の手。7人の中に確実に犯人はいる。晶子は犯人と対峙することを決意するが。本格推理モノかと思って読み始めたが、推理音痴の自分が2/3程読み進めた辺りで犯人に気付いてしまった。でもお勧め。2021/05/18
胆石の騒めき
102
(★★★★☆)話の展開の仕方がうまい。少し注意深く読めば思い至る程度の謎が提示され、答えを胸にドキドキしながら読んでいると、あっさりと種が明かされる。この本の核心は何だろうと思っていると、また新たな可能性が目の前にちらちらと…。そして、その繰り返し。気が付くと残りのページは後少し。あまりにも複雑で解けそうもない謎よりも、能動的に読み進められる。「手の届く」推理小説?(作者曰く、「本格推理小説」ではなく、「サスペンス」とのこと。)本筋とは関係ないけれど、観音像の「目」については同じ感想を持ったことがあった。2018/06/20