出版社内容情報
若き詩人王は詠い、巡遣使マルコ・ポーロは追う。神器に封じられた幼き帝を――壇ノ浦から鎌倉、元、滅びゆく南宋の地へ。海を越え時を越え紡がれる幻想の一大叙事詩。第19回山本周五郎賞受賞
内容説明
壇ノ浦の合戦で入水した安徳天皇。伝説の幼帝が、鎌倉の若き詩人王・源実朝の前に、神器とともにその姿を現した。空前の繁栄を誇る大元帝国の都で、巡遣使マルコ・ポーロは、ジパングの驚くべき物語をクビライに語り始める。時を超え、海を越えて紡がれる幻想の一大叙事詩。第19回山本周五郎賞受賞作。
著者等紹介
宇月原晴明[ウツキバラハルアキ]
1963年岡山県生まれ。早稲田大学第一文学部日本文学科卒。1999年、「お伽ばなしの王様―青山二郎論のために」で三田文学新人賞を受賞。同年、『信長あるいは戴冠せるアンドロギュヌス』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。2006年、『安徳天皇漂海記』で第十九回山本周五郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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遥かなる想い
111
実朝の時代から幕を開ける歴史ファンタジーである。登場人物が多すぎて、正直混乱するが、 幻想的な雰囲気が満載で心地良い。 滅びゆく王朝の末路を描きたかったのだろうか?実朝と 南宋の繋がりが 荒唐無稽で 著者に翻弄された印象が強い…そんな作品だった。2022/10/16
眠る山猫屋
71
伝奇の体裁をとる哀切な貴種流離譚だ。大河ドラマに沿う形で読み始めたが、圧倒的な面白さ。源実朝が出逢う琥珀に包まれた安徳天皇。海に沈んだままの姿で「兵(つわもの)になれ」と魅惑的な誘いの果てに・・・。実朝の近習である若武者の目線で語られる、奪われ追い詰められた王の悲しい選択。草薙の剣ではなく、海の干満を司る二つの宝珠を形見に得た若武者は元寇に際して・・・。実朝の残した数々の詩歌を巧みに取り入れ、その悲しい生き様を浮き彫りにしていく。そして第二部ではクビライ・カーンの命を受けたマルコ・ポーロが主人公に。2022/09/15
NAO
60
壇ノ浦で入水して亡くなったはずの安徳帝が鎌倉幕府3代将軍源実朝の前に現れるという歴史ファンタジー。三種の神器の他にもさまざまな神宝を御所から持ち出しさまざまな不思議を起こす安徳帝。古来そぐわぬ廃嫡をされた皇子や帝は「荒ぶる御魂」となることが多かったが、幼くして命を危うくした安徳帝も「荒ぶる御魂」となってしまうのか。透明な珠の中で眠る稚児。史実に巧みに虚構を混ぜ込んだ妖しい世界はモンゴルまでも広がっていき、マルコ・ポーロの語りは、イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』を彷彿させる。2024/06/25
はらぺこ
59
歴史モノのファンタジー。以前から興味が有ったネタが織り込まれてたので面白かった。ただ第一部の語り口に何度も眠りに落ちてしまったので半分ぐらいにしてほしかった。第二部はCG映像で観てみたい。正直、第二部だけで良い気がするけど第一部を読んだからオモロかったんやろなぁ。映画化したらええのに。2011/08/31
藤月はな(灯れ松明の火)
53
全てを奪われ、流されてしまった想いは何処へ辿り着くのか。絶望し、悔やみ、嘆き悲しみ、憎み、呪い、慟哭し。やがて時は流れ、全てを振り絞った幼き故に強烈な荒ぶる魂は消えずとも透徹した祈りにも似た「何か」へと変わるのか。安徳天皇が八岐大蛇ならば神器の奪還だけでなく、清和源を滅ぼしたのは天孫を滅ぼす為だったのか。武士に生まれた故に文人としての己との差異に苦悩する源実朝が見せた凛然とした最期とフビライ・ハーンの滅亡を幻視できたマルコ・ポーロの境地が物悲しいです。そして「小林の大臣さまや太宰の僧正」という記述に慄然。2013/05/23