出版社内容情報
アヘン戦争から辛亥革命、五四運動に至る列強との格闘を描く。
内容説明
香港はいかにしてイギリス植民地となったのか。十九世紀、アヘン戦争前後から列強の覇権競争と「太平天国運動」など国内の大動乱に直面し、辛亥革命に至るまで、近代を探っていった「中華帝国」の人びとの苦闘の歩み。
目次
1 斜陽の大清帝国
2 アヘン戦争―朝貢体制の動揺
3 太平天国運動
4 上海―「近代文明」の窓口
5 秩序の再編と洋務運動
6 辺境の危機―朝貢体制の崩壊
7 国家建設の構想
8 華人世界の拡大
9 義和団と「新政」
10 辛亥革命
著者等紹介
並木頼寿[ナミキヨリヒサ]
1948年、新潟県に生まれる。73年、東京大学文学部卒業。東海大学文学部助教授、東京大学教養学部助教授等を経て、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授。中国近代史専攻
井上裕正[イノウエヒロマサ]
1948年、神奈川県に生まれる。71年、京都大学文学部卒業。島根大学法文学部助教授、奈良女子大学文学部助教授、同大学教授を経て、同大学理事・副学長。中国近代史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だまし売りNo
36
阿片戦争の原因を貿易や外交の問題とする見解がある。制限貿易と自由貿易、朝貢外交と対等外交の対立である。貿易や外交の対立をクローズアップする議論の背景に阿片密売の反倫理性を誤魔化そうとする動機がないか注意する必要がある。 「たしかに体制や文化の対立はあった。しかし、それが原因になるのなら、もっと早くにイギリスが武力行使に訴えてもおかしくなかった。結局、イギリスはアヘンのためにしか戦えなかったのである」(並木頼寿、井上裕正『世界の歴史19 中華帝国の危機』中公文庫、1997年、71頁)2023/05/03
coolflat
15
アヘン戦争~辛亥革命。清国を中心とする朝貢体制の崩壊から英国を中心とする資本主義的世界市場の中に中国及びアジア諸国が組み込まれていく過程を描く。朝貢体制は宗主国中国と朝貢国である属国から構成されている。従って朝貢国がなくなれば必然的に朝貢体制も崩壊せざるを得ない。1860年以来、ウズベク三ハン国、琉球、ヴェトナム、ビルマと、朝貢国が相次いで諸外国に併合された。そして日清戦争の敗北により朝貢国の最後の砦である朝鮮との宗属関係も完全に否定された。結果、アヘン戦争以来、動揺し続けていた朝貢体制は完全に崩壊した。2017/04/17
KAZOO
11
清帝国末期から辛亥革命までが収められています。特にアヘン戦争や太平天国の乱などが詳しく書かれています。香港が英国の植民地になった経緯が客観的に書かれています。陳舜臣さんのアヘン戦争も面白いのですが、このような淡々とした記述もより現実感がわきます。2014/01/20
tieckP(ティークP)
4
非常にスタンダードな本で、それが魅力。二人で交互に章を書いたりしているが、歴史啓蒙書の王道、つまり事実を伝えること、文体で派手に脚色しすぎないこと、それでいて厳密にすぎて堅苦しくならないこと、著者の考えを奇を衒わずに述べること、などのルールを二人とも守っているから、章ごとにちぐはぐな印象を受けない。王道だけに筆者についての強い印象を受ける本ではないが狙っての態度だろう。内容は、各章ごとにある事象を切り取っているので読みやすい分、全体の流れはやや見えにくいかもしれない。個人的には上海の章を興味深く読んだ。2017/06/20
Mzo
3
ここ数ヶ月で『坂の上の雲』『蒼穹の昂』のドラマを観たり『T.R.Y.』を読んだりしたので、背景知識補強として読む。明治維新で日本が先んじて近代化できたのは小国であったが故なのかも…とかいろいろ考えてみる。2011/01/23