出版社内容情報
19世紀、西欧の帝国主義により、イスラーム世界は危機に陥る。明治維新期の日本と無縁ではない改革運動と近代化への挑戦の道を、現代イスラームの民族問題とつなげて捉える。
内容説明
十九世紀、イスラーム世界は西欧の帝国主義により存亡の危機に陥る。明治維新前から列強の圧力を受け、やがて日露戦争を引き起こす日本の動きと無縁でない改革運動と近代化への挑戦の道を、現代イスラームの民族問題とつなげて綴る。
目次
1 イスラームのいちばん長い世紀
2 ナポレオンとムハンマド・アリー
3 東方問題の開幕
4 アラブ対トルコ
5 イスラームの文明開化
6 イスラーム国家の破産と領土分割
7 イラン改革とシーア派
8 シルクロードのイスラームとロシア
9 イスラームと民族問題
10 日露戦争から二つの革命へ
著者等紹介
山内昌之[ヤマウチマサユキ]
1947年、札幌に生まれる。69年、北海道大学文学部卒業。東京大学学術博士。カイロ大学客員助教授、トルコ歴史協会研究員、ハーバード大学客員研究員などを経て、東京大学大学院総合文化研究科・教養学部教授。イスラーム史・国際関係史、中東イスラーム地域研究を専攻。発展途上国研究奨励賞、サントリー学芸賞、毎日出版文化賞(二回)、吉野作造賞、司馬遼太郎賞を受賞。2006年4月に紫綬褒章を受章(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
11
19世紀におけるイスラム諸国の動揺、すなわち東方問題を扱っている。なお扱われている範囲は、19世紀初頭から20世紀初頭に起こった青年トルコ革命とイラン立憲革命まで。約1世紀にわたる東方問題はナポレオンのエジプト遠征により幕を開けた。ナポレオンの遠征がイスラム世界の中心たるオスマン帝国とエジプトの歴史を大きく転換させたのである。この遠征はオスマン帝国だけでなくアラブからインドに至るイスラム世界を欧州の国際関係に深く結びつけた。イスラムの国際システムは、欧州の西欧キリスト教国際システムに従属し始めたのである。2017/05/15
KAZOO
11
山内先生の本はいつ読んでも興味深く読ませてくれます。この歴史の本でもアラブとナポレオンの関係やトクヴィルや日本人が見たアラブ感など今までにない観点から分析してくれています。日本人にとってあまり有名でない人物に焦点を当てて読ませてもくれます。2014/01/30
tieckP(ティークP)
4
シリーズでも独特の内容で、「山内昌之の挑戦」といった感じ。現代政治についての論客としてもおなじみなだけあって、イスラームを語るにも多量に現代の世界情勢あるいは当時の日本人のイスラーム報告を交えていて、それは「現代日本人がとっつきやすい、鏡としてのイスラーム」を達成しているのだが、その比較作業はひとによってはイスラームの知識を与えられたうえで自分でやりたくもあるだろう。短いコラムを書くのも達者な筆者らしく、どこをとっても読みやすいのは大変な美点だが、全体の流れがやや漫然ともしていて、大著を読んだ気はしない。2017/08/01
つだしょ
2
1)イスラーム社会は近代以前、ヨーロッパに対して優位にあった。ところがオスマン帝国の二度のウィーン包囲の失敗[p25]などによって徐々に衰退へと向かう。おそらくかつて地中海進出を阻まれたレパントの海戦[p107]からヨーロッパに外洋へ先んじられ、遠隔地貿易(アメリカ大陸など)を奪われ、「海に対して窒息」した状態になった[p36]ので主に軍事的、経済的に後退。2013/03/25
MUNEKAZ
1
19世紀のイスラーム世界の近代化への挑戦と挫折を、日本の明治維新と絡めながら叙述しているのだが、これが結構微妙に感じてしまった。同時代の日本人のトルコやイランに対する見方は興味深く思えるが、それがメインで知りたいことでもないので、毎章ごとに続くとちょっと鬱陶しい。いずれにしてもオスマン帝国などのイスラーム教による民族を超える世界帝国が、国民国家という新しい西欧のルールに適応できず、また経済観念の薄さから借金まみれで崩壊していくのを読むのは、やっぱり悲しい。2016/06/07