出版社内容情報
暗い時代を予感しながら、喧噪渦巻く東南アジアにさまよう詩人の終りのない旅。『どくろ杯』『ねむれ巴里』につづく放浪の自伝。〈解説〉中野孝次
内容説明
三千代夫人はひとりベルギーに残った―。暗い時代を予感しながら暑熱と喧噪の東南アジアにさまよう詩人の終りのない旅。『どくろ杯』『ねむれ巴里』につづく自伝。
目次
「月の世界の人」
マルセイユまで
波のうえ
氷水に浮いてる花
関帝廟前好事あり
関帝廟第二
夢は蜈〓(しょう)嶺を越えて
さらば、バトパハ
情念の業果
やさしい人たち
おもいがけないめぐりあい
ふたたび蛮界
蚊取線香のむこうの人々
かえってきた詩
紫気に巻かれて
口火は誰が
マラッカのジャラン・ジャラン
疲労の靄
世界の鼻唄
著者等紹介
金子光晴[カネコミツハル]
明治28年(1895)、愛知県に生まれる。早大、東京美術学校、慶大をいずれも中退。大正8年、『赤土の家』を出版後渡欧、ボードレール、ヴェルハーレンに親しむ。大正12年、『こがね蟲』で詩壇に認められたが、昭和3年、作家である夫人森三千代とともにふたたび日本を脱出、中国、ヨーロッパ、東南アジアを放浪。昭和10年、詩「鮫」を発表以来、多くの抵抗詩を書く(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
52
7年に及ぶ「ゆきあたりばったり」の旅を語る三部作の最終巻。日本を目指す本書では行き着く先が見えているからか、不安の中を漂うようだった前2冊にはない安定感を感じます。日本を前に南洋でぐずぐずと過ごす様子は相変わらずなのですが、それでも思い出すのはどこか気の晴れたような明るさばかり。自分の弱さへの嫌悪、寄る辺なさ、金の苦労。煌びやかな言葉に照らされながらそんな泥沼を進むような旅でしたが、最後はそこを抜けて高いところに出たようで、作者が到達したその場所を望めたただけでこの旅をしてきたかいがあったように思います。2019/07/22
jahmatsu
27
遂に三部作完結篇。毎回ではあるが、金子先生の有るような無いようなバイタリティと破天荒な生き様には感動すらさせられる。今回はジャングルにまで。人間とりあえずブラブラ散歩するがことが大事だな。それと何と言っても三千代夫人、最強。2019/07/18
メタボン
27
☆☆☆ 詩的な文章の割合は「マレー蘭印紀行」「どくろ杯」「ねむれ巴里」に比べて少なく、紀行の事実記述が多いような気がする。その破天荒な紀行を体感するには面白かったが、やはり幻惑されるような詩的世界に堪能できるのは他の三部作の方か。2018/09/09
harass
24
再読。詩人の自伝三部作の最終巻。妻をベルギーに残し東南アジアを通って帰国するまで。東南アジアあたりではちょうど中華事変が勃発しきな臭くなっていく。詩人の眼が南洋の風物を描写していきなかなか面白いのだが、正直他の本と比べてピンと感じないように思えた。しかしいつも思うが著者の思い切りの良さにも驚くが三千代夫人も大したもので……2014/05/19
tsu55
16
『どくろ杯』『ねむれ巴里』に続く三部作の完結編。 パリからの帰途、立ち寄った反日感情が沸騰するマレー半島での生活が主な内容になるが、ヨーロッパでの鬱屈した様子にくらべ、むしろいきいきとしているように感じられる。 相変わらずデタラメなようで誠実で、誠実なようでデタラメな捉えどころのない人だが、そこがなんとも魅力だ。2017/05/30
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