出版社内容情報
昭和は金融恐慌で幕をあけた。不況は深まり階級闘争は激化する。満州事変に始まる日本の大陸進出は着々歩を固め、軍部はますます強大になってゆく。〈解説〉柴垣和夫
内容説明
たび重なる昭和の恐慌が、経済界の混乱と民衆生活の破綻を拡大する情況のなかで、軍部ファシストは台頭し、満州事変・国際連盟脱退をへて、日本は孤立化の運命をたどる。おりしも起きた二・二六事件は、苦悶するデモクラシーに最後の止めをさし、戦争への道がつづいてゆく。
目次
世界の動きと日本
金融恐慌
田中内閣
社会主義の勃興
中国問題
大恐慌襲来
社会運動の激化と衰退
恐慌克服策の展開
ファシズムの擡頭
満州事変
準戦時体制へ
二・二六事件
暗い谷間
エロ・グロ・ナンセンス
ファシズムの日本的特質
著者等紹介
大内力[オオウチツトム]
1918年(大正7)、大内兵衛氏の次男として東京に生まれる。42年(昭和17)、東京帝国大学経済学部卒業。日本農業研究所所員をへて、47年(昭和22)、東京大学社会科学研究所助教授。57年(昭和32)経済学部に転じ、同教授、その間経済学部長、総長特別補佐(副学長)を務める。79年(昭和54)定年、東京大学名誉教授となる。同年信州大学経済学部教授、84年定年、名誉教授となる。経済学博士。82年日本学士院会員に選ばれる。89年社団法人学士会副理事長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
108
大内兵衛さんの御子息で、マルクス経済学の観点から農業経済学、日本経済論、世界経済論などの著書を数多く書いておられて私も先生の書かれたものはいくつか読んでいます。このような時代について書かれるのは先生の得意とするところだとは思います。ファシズムについて書かれた部分が日本の特質という観点から分析されていて参考になりました。2015/12/12
kenitirokikuti
10
図書館にて。2006年改版の、23巻大正デモクラヲシー、24巻ファシズムへの道、25巻太平洋戦争の3冊を眺めた▲さて、この巻の著者である大内力は大内兵衛の次男で、マルクス経済学、宇野弘蔵の弟子筋と。改版解説もその筋の人が書いている。現在なら、歴史学のひとが書くだろうし、「ファシズムへの道」という表題にもならないだろう。保坂正康『昭和史の核心』(PHP新書、2022)収録「昭和史ブーム 6回目」には、カルチャーセンターなどで〈唯物史観風こ公式的な見解はまったく聞かれなくなぅた。〉とある。2024/08/17
しびぞう
5
本文ではなく解説p532にあった「戦前責任」という言葉に全部持っていかれてしまった。高橋眞司という人の言葉とのこと。その言葉を先に知って読めば、もっと違ったものとして読めたかもしれないのに。1965年当時では、どれほどの学者の頭の中でも昭和元~11年頃の事がまとまってなどいるわけがなく散漫とした印象だったが、「戦前責任」という一言で、その内容があとからぐさぐさと刺さってくる感じがする。戦争が無い事=平和などとは思わないが、戦争があったからこその今なのだ、と思う辛さを、未来の人たちに味わわせたくはない。2022/10/20
訪問者
4
いよいよこのシリーズも昭和に入る。満州事変、二・二六事件と太平洋戦争へと向かって歩みを進めてゆく。最終章の「ファシズムの日本的特質」は必読だろう。また解説の「戦前責任」という言葉には考えさせられた。2023/02/06
とりぞう
4
「共産党の運動は性急で弾力性を欠いているために、またしばしば目的のために手段を選ばない傾向があるために、組織を割ってしまう結果を生むということもそうである」なんて話など。興味を持たずにいられないエピソード満載の時代。ただ、話者によって百億もの「偏見」が紛れ込むのもこの時代。「時代」を理解するには、いろいろな努力が求められる。2022/02/16