出版社内容情報
四人に一人が死んだ沖縄戦。県民の犠牲を最小限に止めるべく命がけで戦い殉職し、今もなお「島守の神」として尊敬される二人の官僚がいた。〈解説〉湯川 豊
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
21
沖縄返還50周年の今年、『島守の塔』という映画が上映されることを知った。太平洋戦争の末期、戦火が迫る沖縄に知事と警察部長として赴任し、沖縄の人びとのために命を懸けた二人の官僚を描いた作品だ。それをきっかけに、島田叡と荒井退造というこの二人の文官のおおらかで芯の通った人間性と、少しでも県民の犠牲を減らせるよう戦時行政にあたった苦闘を記した本書を何年かぶりに手に取った。 「だれかが、どうしても行かなならんとなれば、言われたおれが断るわけにはいかんやないか。おれが断ったらだれかが行かなならん。⇒2022/06/29
ナディ
17
島田叡、荒井退造という2人の命懸けの戦いに涙が止まらなかった。2人や、2人の下で働いた人々、沖縄県民の犠牲を思うと、本当に頭が下がる。民間人を犠牲にして、姑息に生き延びた軍人や逃げた前知事達の醜さを彼らの身内はどのように感じるのだろうか。2015/09/13
モリータ
15
島田叡県知事のことは兵庫高校(旧神戸二中)の友人から聞いたのだが、兄弟校である神戸高校(旧一中)出身の人間として、その人物像に非常な親しみを覚えた。文武両道、常に快活で暗い部分を見せず、素直な責任感に基づいて行動する。その友人や同級の何人かを思い起こさせたが、それは旧制中学(そしていわゆる地域伝統公立校)が育てうる一つの理想像と言えるだろう。個人的な関係を重ねると、私の弟は沖縄県庁に勤めており、今も構造的な抑圧を強いている側の本土出身の弟が、平時、そして来るべき非常時にどのような存在として振舞うのか、2017/08/10
おせきはん
10
沖縄戦の最中、良心を失わずに県民の保護という職務に邁進した島田叡知事、荒井退造警察部長の生き様には本当に頭が下がりました。両氏の人徳によるのでしょうが、両氏を命がけで支えた方々もすごいと思いました。私自身は、激戦地への転勤を打診されたときに、島田知事のように「おれは行くのは嫌やから、だれか行けとは言えん」と覚悟を決める自信はありません。2017/12/12
モルテン
9
太平洋戦争沖縄戦の2か月前に沖縄県知事に任官された島田叡。沖縄県警察部長として島田と共に県民保護に尽力した荒井退造。2人の内務官僚の沖縄戦の足跡をたどるノンフィクション。まずはなによりも、地獄とはこのことかと言わんばかりの沖縄戦の様子と、それを導いた当時の軍にあ然とする。どうしてこんなことになるのか。どうして。そんな問いが頭をぐるぐるする。その中で、一人でも県民を生き延びさせようとする島田と荒井。島田にとって県民は守るべき存在だったのだろう。米軍に迫られ逃げるさなか、犠牲となった県民を見るのは辛いこと→2021/07/25