出版社内容情報
ビスケットもまだ知らない山国から上京して、明治の新東京の風物と社会に驚き、やがて目の当たりにする大正の大震災…。明治大正の世相・風俗を深く見透した記者魂の面目躍如の名著。
内容説明
ビスケットやエプロンも知らない田舎から上京。書生生活を送りながら、明治の新東京の風物と社会に目をみはる。新聞記者となってからは乃木大将の殉死の取材などで活躍。やがて出会う大正の大震災の混乱と騒動の中で見たものは…。明治大正の世相風俗を深く見透した記者魂の面目躍如の名著。
目次
維新当時の滑稽外交
憲法発布と日清戦争
明治時代の学生生活
政府の恐露病と日露戦争
明治大帝の崩御
乃木大将の忠魂
明治大正凝視の中心となった女性
大正八年夏の世相
大正十年歳晩記
関東大震災
大震災後記
著者等紹介
生方敏郎[ウブカタトシロウ]
明治15年(1882)、群馬県に生まれる。39年早稲田大学英文科卒業。朝日新聞社に入社し、のち『早稲田文学』の編集に携わる。一方で新聞、雑誌に随筆・小説・翻訳等を発表して、諷刺のきいたユーモア作家として名を挙げる。戦時中は個人雑誌『古人今人』を発行して軍国主義に抵抗した。昭和44年(1969)逝去
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感想・レビュー
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KAZOO
10
筆者は記者をやっていたということで、かなり見聞記事をきめ細かに書いています。当時の書生生活の様子が本当によくわかります。日露戦争や関東大震災の様子も単純に書き写すのではなく庶民の生活状態がわかるような書き方をしてくれています。今はメディアが発達しているからはやらないとは思いますが東北大震災などの状況をこのような文章で書いてくれる人がいるのでしょうか?2014/01/23
AR読書記録
3
たいっそう面白い.記録であり風刺であり文学であり... やっぱり,現在に,○○年にこういうことがあった,っていうのを“歴史”として学んだところで,なんらわかったことにはならない.当時のナマの人々の心象,反応を知るのが大事だと思う.その意味で,全然知らなかったことばかりで目から鱗ぼろぼろ落ちたし,また,日本人て全然変わってねぇな!とある意味感心もした.読んでいて,100年近くも前に書かれたものという感じは全然しない.明治大正に興味のある人だけじゃなくて,日本人必読書にしてもいい気がするけどな. 2012/09/02
iwasabi47
2
前半の幼年期、学生時などが興味があった。バンカラの様子や人気の女性など。後半の対話編はあまり興味をもてなかった。2020/10/03
sarara0904
2
昭和初年の作と思えないほど現代的な文体。明治15年生まれの著者の記憶と重ねて語られる明治大正の歴史に、当時の庶民の受け止め方や感覚が生き生きと反映されている。明治から昭和初年までの世相のめまぐるしさ、変転の大きさは戦後日本の比ではない。庶民が持つ江戸時代の倫理や常識の根深さと奥深さ、新時代のあれこれを自分たちなりに消化していくたくましさ。 歴史書には載らない皮膚感覚のようなものが追体験できたようで新鮮だった。2014/05/07
akiu
1
タイトル通りの回想録。帝都東京が市民目線で語られているので興味深く読めた(筆者は新聞記者であるから決して「庶民」ではないが、それが彼を「傍観者」たらしめているため)。大震災直後の章が一番面白い。町全体に漂う目に見えない不穏な空気がよく出ていて大変良かった。内容はここで終わっているが、復興後の話も読みたかったと思う。2010/02/22




