出版社内容情報
月的なるものをめぐって古今東西の神話・伝説・文学・芸術を縦横にたどり語られる「月の百科全書」。月への憧れを結晶化させた美しい連続エッセイ。
内容説明
いかがわしいほどに高貴で、すましているのに何をしでかすかわからない―。“月明派”を自認する著者が、文学から奇想科学、神話、宗教、現代思想、先端科学に至る古今東西の月知を集成した「月の百科全書」。長年の月への憧れを結晶化させた美しい連続エッセイ。
目次
睦月―月球儀に乗って
如月―遊星的失望をこめて
花月―月がとっても青いから
卯月―月のタブローは窓越しに
皐月―月は今宵も遠ざかっている
水無月―お盆のような月が出る
文月―神々はモノリスの月に棲む
葉月―月の女王の帝国
菊月―熱い月と冷たい月
神無月―花鳥風月の裾をからげて
霜月―遠い月の顛末
今夜もブリキの月が昇った
著者等紹介
松岡正剛[マツオカセイゴウ]
1944年京都市生まれ。編集工学研究所所長、帝塚山学院大学教授。二十代で創刊した雑誌『遊』によって、日本のアート・思想・メディア・デザインに大きな影響を与える。その後、独自の方法的世界観を編集工学として確立、その研究成果を著作・映像・マルチメディア・インターネットなど斬新な手法で発表した
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うりぼう
22
正剛先生の日陰者である「月」に対する情愛のあふれた本。「睦月」で私達の本気度が試され、月を追うごとに面白さを増す。「風の博物誌」が客観的な「風」を多様に捉えたものなら、「月を遊学する」のは、正剛先生の主観にかなった遊び心が縦横無尽に展開される。クレーターのあるおかげで、満月は全円が均等にかがやく姫になり、「氷点下3度の温度」は、「温」の字が邪魔をする。富田さんは「月は後向きになって、煙を吐いて留守になる」。で、お盆のような月は、未だ解明されない。結論は「月月に月みる月はおおけれど月みる月はセイゴウの月」。2010/04/11
マウリツィウス
17
【松岡正剛:"Lunatix"】「月がとっても青いから」-松岡正剛さんの語る「月」とは何だったのだろうか。《月》が教えてくれる。つまり美術史の語る《引用図版》とはシェイクスピアの語り得た「月」でもある。文学史と古典芸能の語る《絵画横断》は《伝統》、「鏡のように反映される(コリント)」の言葉すら引用趣旨に含められるだろう。一つの意味ではなく「二つ」-優しい月夜を飾る《晩》にこの本は最適でもある。優しさと太陽は「月と普遍」-古典文明史を彩った「月夜」を語る松岡さん。異教/異端/旧教/新教/正統多様横断する証。2013/10/22
かごめ
15
月では呼び捨てのようですし、お月様は…アナタ、とお呼びしても良いですか?アナタのことは母の母胎にいるころから知っていました。まだ、名もないわたしを何か月と呼んでいましたから。母胎を離れて見たのは有明のアナタです。それから、今夜に至るまで幾度もアナタとお逢いしました。アナタは遠い人です。多くの人に見つめられ、憧れ讃え、色で、形で、光で、言葉(ことは)で描かれてきました。アナタには陰があることは知っていますよ。その陰に魅せられるかもしれません。でも、見つめずにはいられません。今夜は十六夜、誘ようてください。2020/06/08
ゆーじん
12
月に関してこれほど網羅した本にお目にかかったことがない。誰しも一時、月の虜になってしまうだろう。2013/05/26
カテータク
10
学術分野を問わず月に関することをこれでもかと詰め込んだエッセイ集。面白いと言えば面白いのだが、細かい解説はなく、自分の得意分野外の内容はなんとなく理解する程度で読み進めていくしかない。内容の正確さも微妙。良くわからない内容が多いと感じながら読んだ自分でも、明らかな間違いを数か所見つけたので、知識のある人が読めば間違いはさらに増えそうだ。良くも悪くも著者が好き勝手書いたエッセイ。しかし、書籍として出版するのなら、最低限の正誤くらい調べ校正して世に出すべきではないか。手間を惜しんだ結果だとしたら大変残念だ。2018/01/01