内容説明
宦官とは、去勢された男子で宮廷に仕える者をいう。その歴史は古く、日本以外の世界各国に広がったが、特に中国史上での活動は有名である。その驚くべき実像を克明に描いた点で、いまも比肩するものがない名著。
目次
第1章 つくられた第三の性
第2章 後宮の住人
第3章 帝国を滅ぼした二つの側近―前漢・後漢
第4章 女禍と宦官―唐
第5章 官僚と宦官―明
終章1 宦官はなぜ日本に存在しなかったか
終章2 現代における宦官的存在
著者等紹介
三田村泰助[ミタムラタイスケ]
1909‐1988。京都大学東洋史学科卒業。立命館大学名誉教授。専攻は明・清朝史。内藤湖南、羽田亨に師事した。中国思想や中国の文化史にもくわしく、中国史料の解読には定評がある
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感想・レビュー
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mitya
2
宦官については、前々から気になっていた。およそ知りたいと思っていたことが書かれてあって、面白かった。君主と不可分の存在であるが、その君主も暗君になると、その残忍さや愚弄さが尋常ではない。宦官も影の立場でありながら、権力をもつと歴史を動かすほどになる。なぜ日本に存在しなかったのかの研究も興味深い。2017/06/09
アルハ
1
人でありながら人でない存在として扱われていた宦官がいかにして歴史の影で暗躍するに至ったかをわかりやすく解説している良書。 無学で不潔、若く容色の良い時期は愛玩物のように扱われるが歳を重ねると疎まれ、子孫を残せないが故に利己的で同胞意識が強かったという彼らの悲哀の凄まじさもだが、それ以上に宦官が特に活躍した時代(漢・唐・明)の歴代皇帝のキャラが濃い。暴君も暗君も日本にはまずいないスケールと言うか……。 宦官の専横を許さない為に歴史に倣い対策をしても、結局些細な事から綻びが出てしまうのも人間の限界を感じる。2024/04/17
katashin86
1
子孫を残すことができない宦官という存在。後宮の管理者として、そして専制君主の側近として中国史に大きな影響を与えてきた、とくにその弊害と横暴の歴史を主に漢・唐・明の3王朝を取り上げてつづる。 宦官という歴史的存在が蘇ることはもうありえなくても、権力がというものが組織の中で奇怪な存在を生み出すことはこれからも続いていくことを示唆して終わる、古典的名著。2022/08/09
Tonex
1
中国の古典文学や歴史の本を読むとよく出てくる「宦官」について詳しく知りたいと思い読んでみた。宦官の数について、なんとなくイメージで百人くらいだろうと思っていたが、清の時代、宮廷の十分な運営に三千人は必要で、宦官が一番多かった明の時代には十万人を超えていたというのだから驚き。「宦官の特産地」という地域が存在したというのも驚き。宦官の作り方については、以前読んだ浅田次郎『蒼穹の昴』でそのシーンだけ記憶に残っていたので驚かなかった。宦官がなぜ日本に存在しなかったのかについては、本当に謎としか言いようがない。2014/12/10
冬至楼均
0
日本が中国から学ばなかった数少ないものが科挙と宦官。前者は功罪半ばだけど、後者の方は…。2014/04/30